がん再発・転移したとき、傷病手当金と障害年金どちらを利用するか

現在、当事務所で運営している「がん治療中のお金の解決準備セット」を利用される方は90名を超えました。

今回のご相談者S.Aさんもその利用者の一人です。

「がん治療中のお金の解決準備セット」をすべて終えられた方の特典でもある、フォローアップ相談会に参加され、「かなりのコストカットが期待できそう」と喜びの声をいただけましたので、ご本人の了承を得た上で内容とご感想をご紹介します。

2022年1月1日から通算化

傷病手当金の通算化の前の情報ですので、ご了承ください。

通算化になり、傷病手当金も取っておくという選択肢が増えた分、障害年金との兼ね合いで悩まれている患者さんは増えていると感じています。

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相談者の情報

夫婦

S.Aさん、50歳代、女性、東京都在住、夫と二人暮らし。扶養内で働いている。

夫は10年前に大腸がんの手術、7年前に肺転移にて手術、昨年肺転移の再発にて抗がん剤治療開始、今年脳転移が発覚し、手術を行う、今後は放射線治療の予定。

夫の仕事、制度、保険の状況

元々営業職であり、現在は有給休暇を消化している。
企業独自の健康保険組合に加入、高額療養費の区分は「イ」、付加給付により最終的な自己負担は約5万円。
今までは前会社のGLTD(団体長期障害所得補償保険)や、有給消化にて2週間に1度の抗がん剤点滴治療を行ってきた。今まで傷病手当金の利用はなし。

生命保険の医療特約にて入院保障あり。

相談内容

  • 後遺症がどの程度残るか不明のため、収入の予定が立たない
  • 職場復帰できても給料減給の可能性、どこか減らした方が良いのか
  • 脳手術の後遺症では仕事がまったくできないわけではないので(自宅静養にはならない)傷病手当の申請ができるか疑問
  • 後遺症で介助が必要になれば私も仕事を辞めて介助しなければならないので、さらに収入が減ることを心配

ご相談でお伝えしたこと

利用できる制度に関しては、①後遺症により復職が難しい場合と、②復職後の給料が減った場合それぞれで考えました。

また、事前にS.Aさんから家計の情報をいただいていましたので、支出面で調整できるところがないかを確認しました。

①後遺症により復職が難しい場合

会社員であるS.Aさんの夫が、休職の際に生活保障として利用できる傷病手当金についてお伝えしました。

傷病手当金は基本的に一傷病につき、一回の利用です。S.Aさんの夫はまだ利用したことがないため、休職が続いた場合の選択肢の一つとして残っていました。

ただ、第一選択で傷病手当金が良いのか、それとも他に利用できる制度があるのかを確認しておく必要があります。職場の就業規則で、有給休暇や病気休暇、休職規定に関する記載についてを確認していただくこと、そして傷病手当金の利用方法についてお伝えしました。


傷病手当金の実際の手取り額を事前に知っておくことで、今後の支出の目安にもなるため、試算方法をお伝えしています。傷病手当金の概要や一度利用したことがあるケースについては、こちらに記載しています。

②復職後の給料が減った場合

年金手帳

障害年金(年金制度)は、10年前と今回の転移のとき両方とも初診は厚生年金加入なので、「仕事に支障がある」と判断されれば障害年金の可能性もあること(仕事しながら受給可能)をお伝えしました。

ただ、経過が長く、初診日もどちらか判断が難しいので、こういった複雑な場合はがんの障害年金に詳しい社会保険労務士に一度確認してみた方が良いケースです。
そして申請や審査には時間がかかり、体調によってはタイミングが重要です。

S.Aさんの夫の場合は復職の場合、障害年金の申請の可能性があるため、確認は急いだほうが良いと判断し、こういった状況に詳しい社会保険労務士をご紹介しました。

③支出は項目ごとに検証し、優先順位をつけて調整

通帳と電卓

現時点で、手取り収入が変わらなかったとしても、治療費なども含め、今までと同じ支出の状況だと、1年後には約60万円赤字となることがわかりました。

そして、ご主人の収入減とS.Aさんが介助のため休職となった場合、約150万円の赤字が予測できました。

生活費、通信費、住居費などすべての項目を今までどのように支払っていたのかを確認し、S.Aさんに生活状況や事情などもお伺いしながら見直しのポイントをお伝えしました。
ここで、一番注目したのが自動車関連費です。

維持費と自動車ローンで約90万円/年です。用途は夫の通院のみでした。

今後放射線治療の期間は必要不可欠ですが、放射線治療終了後は通院頻度は少なくなるため、自家用車以外の方法について検討していくことになりました。

費用面だけでなく、心身への負担や利便性なども考慮し、S.Aさんのご自宅から病院までの距離で受診パターンを2つ想定し、①今後も自家用車②タクシー③カーシェアリングの3つで検証した結果をお伝えし、ご夫婦で検討いただくことになりました。

また、現在治療の真っ最中であるため、体調の不確定要素はありますが、今後症状が悪化した場合に利用の可能性がある介護保険タクシーや、資金面が厳しくなった場合の選択肢の一つとして、生命保険のリビングニーズの要件や注意点についてもご説明しました。

相談後の感想

1.ご相談のきっかけ

収入と治療、生活のバランスを本気で考えないといけないと思っていたところに今回の特別キャンペーンを知り申し込みをさせて頂きました。

※「がん治療中のお金の解決準備セット」を実践中の方が利用できる相談料割引制度のことです

2.印象に残ったところ

傷病手当の期限が来年度から通算になるという新しい情報を頂きました。
最前線で相談にあたる黒田先生の情報の底力を実感しました。とても頼もしいです。

※傷病手当金の改正についてはこちらをご覧ください

3.お気持ちや考え方など、こんな風に変わった

正直、こんなに丁寧に相談に対して回答いただけるとは思っておりませんでした。
きちんと議事録まで頂き、あとから見返して相談内容をちゃんと活用でき、とても重宝いたしました。

※相談終了後にはレポートをお送りしていますので、当日はメモなど取らなくても大丈夫です。

4.同じように悩んでいる方へのメッセージ

自分の望む治療、自分らしく生きる人生を望んで努力してもやはりお金がないとなかなか厳しいものがあります。
がん治療は情報戦です。お金に対する公的制度の情報と活用も立派な情報戦だと思います。


がん治療に特化したお金の問題というのは相談できる場所や情報が少なく、黒田先生のような方は本当に稀有な存在だと思います。
治療やお金に関する事で黒田先生は必ず私達の強い味方になってくれると思います。


お金の問題が少しでも解決すれば治療や時間のリソースが増え、後悔しない選択を選べると思います。
迷っている方はぜひ黒田先生に相談してみて下さい。必ず味方になってくださいます。
私は相談して本当によかったと思っています。

看護師FP黒田の振り返り

大事なこと

今回はS.Aさん自身が「このままの支出で収入が減ると大変、だけどどこを減らしたらよいのか」というところまで考えられていたので、情報を整理し、可能性のある選択肢をお伝えしていくという流れでした。

再発・転移の方は今回のように傷病手当金か障害年金かという選択に迫られるケースがあります。
併給はできませんが、どのような状況だとどちらが利用できるのか、体調や要件などを加味した、申請のタイミングのポイントを整理しておけると、今後の収入源が確保でき安心です。

また、再発や転移で初診日の特定が難しい場合や、生活や仕事に支障のある症状が複数といった、複雑な場合や、ご自身や家族での申請が難しい状況の場合は、社会保険労務士に早い段階で確認されておくのが後々の申請を考えると得策だと考えています。

現在は手術を終え、放射線療法に向けて体調を整えている時期であり、後遺症などから転倒に注意する必要があり、S.Aさんも身の回りの介助などで大変な時期です。

放射線療法を終える時期に体調の変化をみながら、今回の情報をもとに今後の生活設計を一緒に考えていけたらと思います。

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筆者プロフィール

黒田 ちはる
黒田 ちはるがん患者さんのお金の専門家 看護師FP®
10年間の看護師経験を活かしたFPとして、がん患者さん、ご家族専門に年間およそ180件の家計相談を行っています。
治療費捻出だけでなく、安心して治療が行えるための生活費や教育費、住居費の悩み解決を得意としています。
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書籍:「がんになったら知っておきたいお金の話 看護師FPが授ける家計、制度、就労の知恵」(日経メディカル開発)