がん治療特有の傷病手当金の疑問「いつから申請したら良いのか」

会社員や公務員が利用できる休業補償の傷病手当金は、長期療養であれば特段難しいこでなくても、症状が一定しないがん治療では選択肢が増えることもあれば、利用が難しくなる方もいます。

「いつから傷病手当金を申請したら良いのか」については、正解はありませんが、あなたにとってのベターな選択肢があります。

これからご紹介する内容は、「いつから?」のほかにも、今までに相談の際に寄せられた質問をもとに、がん患者さんのお金の専門家 看護師FP黒田がポイントを解説します。今後の選択に参考にしてください。

ただ、状況によって異なりますので、迷った場合は健康保険証に記載の健康保険組合や病院に入っている社会保険労務士に確認されることをお勧めします。

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「いつから」今までとこれからの治療内容をまず確認

治療と治療との期間が空いている場合

・手術の後次の治療開始(抗がん剤など)時間が空いているケースや、手術後数か月間経過観察していたけれど転移が見つかり、抗がん剤治療が始まったというケースがあります。
傷病手当金は就労不能状態により欠勤した証明をもとに申請する制度なので、基本的には最初の治療の時から利用は可能ですが、悩むのはこういったケースです。

例)1週間手術入院し1週間自宅安静、その後復職期間がある程度あり、再度抗がん剤治療のため休職したケース

脳梗塞など一定期間病状により休職せざるを得ない疾患とは異なり、がんで傷病手当金を申請するのは、がん自体の症状というよりは治療による影響であるパターンが多いため、治療スケジュールに左右されることが多いというのが実情です。

ですので休職を経た後に申請する形なので、過去3ヶ月ほど振り返り、いつのタイミングから申請したら自分にとって良いのかと悩む患者さんは多いのです。

ここで重要となってくるのが、「今後の治療が続くのかどうか」です。

先ほどの例ですと、今後抗がん剤が長期にわたり働くことが難しくなりそうだとわかっている場合には復職期間の3週間が後々貴重な傷病手当金受給期間となり得る可能性があります。

今までの治療経過とともに今後の治療方針もがんの場合はとても大切な確認事項となります。

ただ、どうしても見通しがわからない場合があります。
治療をしてみないと効果がわからないケースです。
その場合は復職期間の長さやこの後に説明する他の制度との兼ね合いなど様々な方面から検証していく必要があります。

進行した状態でがん治療が始まるケースや、再発の方の場合

今後予測される治療スケジュールによっては、長期に就労不能となる可能性があるのが、進行した状態でがん治療が始まるケースや再発した方のケースです。

「今は3週間に1度の治療を行い、副作用自体は3日目~5日目がつらいけれど、それ以外は何とかなっている。今の治療が効かなければ毎週の治療が予定されているので、そうなると仕事も休みがちになりそう」

という方もいましたので、今の治療内容と今後の治療方針の両方を確認することは、傷病手当金を申請する上でも重要です。

傷病手当金以外にも、他に利用できる制度はないかを検証

治療内容を確認したら、次に有給(残日数と発生時期も確認)病気休暇や障害年金など他の制度なども含めて検証していきましょう。
制度によっては時期が限定されている場合もありますので、就業規則がある場合は必ず確認し、今利用できる制度と今後も利用可能な制度を分別し整理すると、今後も安心です。

就業規則が無い場合は雇用契約書を確認してみると良いでしょう。
同じ制度でも職場によっては運用が違うこともありますので、この辺りは経験談などを参考にしすぎない方が良いかもしれません。

制度は複雑ですので、少しでも疑問に思ったことは、病院に入っている社会保険労務士に確認されるのが良いでしょう。
あなたがかかっている病院内の相談支援センターに、社会保険労務士の相談が受けられるかを確認するとよいですよ。

いつから申請手続きは可能なのか、どのくらいで支給されるのか

傷病手当金は後払いです。ちょっと複雑なので、事例でご説明しますね。

(5月25日が締め日で6月10日が給料日の方のケース)

6月25日以降に、5月26日~6月25日までの出勤欠勤の証明①を職場で書いてもらい、6月25日あたりで病院に労務不能の証明②を書いてもらいます。

7月上旬に①②両方揃ったら、健康保険組合へ申請します。
書類の不備が無ければ3週間ほどで審査の結果が出ます。

ポイントは給料の締め日です。

最短で給料の締め日から約1か月で審査の結果がわかるので、振り込まれるのはもう少し先です。
ですので、支給されるまでの治療費、日々の生活費や支払い関係など大丈夫なのかも確認ておくと安心です。
確認方法についてはこちらに まとめています。

治療前には傷病手当金の利用が難しい

がん患者さんの多くは症状がないまま治療が始まります。
これが「就労不能であることが要件」である傷病手当金の利用で大変難しいところです。

治療の影響によって働くことが難しくなり、傷病手当金を申請するケースが多いため、検査の段階や治療開始前という時期はまだ就労不能ではないと医師による判断となるケースが多いです。
「身体的には働けても、働くことは難しい。どうにかならないか」と言われることもありますが、こればかりは医師もあなたの体の状況を医学的に判断している故なのです。

転医するまでの期間も就労不能を証明できる医師がいるかどうかで変わってくる

紹介状を持って転院する場合、紹介先の病院に予約して受診することになるので、受診までの間空白の期間が生じるケースがあります。

基本的に紹介先の医師は診察してからでないと就労不能を証明できないためです。
相談の際にもどうしていったらベターな選択ができるのかを、社会保険労務士に確認しながらその都度考えている状況です。

退職後継続して受給するための注意点

健康保険組合によっては健康保険を任意継続加入でないと受給できないこともありますので、健康保険証に記載の健康保険組合に確認しましょう。
他、退職後に継続して受給するための要件についてはこちらに記載しています。

「この症状は就労可能」と医師に言われた場合の対処法

あなたの希望と医師による医学的見解で就業不能にズレが生じた場合の対処法です。
明らかに症状などがなく、就労可能な場合は適していません。

よくあるのが、抗がん剤投与中の自宅療養中での見解です。
抗がん剤投与日は比較的体調が良いので、自宅での副作用の状況をあまり把握されていない医師も中にはいます。そういった場合に「就労不能」の見解に患者―医師間でズレが生じることがあります。


こうした場合はまずは投与日から診察日までの体調の状況を目に見えるよう箇条書きでよいのでメモしてみましょう。そして、伝えやすい看護師や医療ソーシャルワーカーにメモを見せながら説明してみましょう。

聞いてもらった方に診察の際に同席してもらいます。
メモを見てもらいながら主治医へこのような状況でつらくて働けなかったことをポイントで説明します。

同席してもらった看護師や医療ソーシャルワーカーに助言してもらうことで伝えやすくなるかもしれません

窓口担当者にうまく伝わらない場合

健康保険組合の担当者や職場の担当者にうまく状況を伝えられないことや、経験の少ない窓口担当者の理解を得られなかったことで、希望していた返答を得られないこともあります。
傷病手当金受給の可能性に大きく影響してくることなので、ここは質問の仕方を準備していくことが必要です。

そのためには、

1.治療内容と治療による仕事への影響についての把握

2.ほかの制度との検証

が必要となります。

健康保険組合には○○について確認したいなど疑問が定まっていれば知りたい内容が得られますが、1.2.を考え、方向性をあなたの中である程度定めていないと、知りたい内容を得るための質問ができません。

どのように質問したら良いのかについては、病院に入っている社会保険労務士に確認すると良いでしょう。

傷病手当金は置かれている状況によって様々、あなたにとっての最良な利用方法を見つけましょう

このように、体調の変化があるがん治療の特徴のため、傷病手当金の申請は困難なケースが存在することを今回は解説してきました。

一定期間ずっと働けないことが多い他の慢性疾患やケガとは違い、ここが難しいところでもあります。

傷病手当金は本当に複雑な制度です。

同じ傷病手当金でも、あなたにより適した利用をするためには、今までの治療期間とこれからの治療方針での就業不能期間を確認し、整理していくことが大切です。

いつから、他の制度との兼ね合いなど迷っている場合は、病院に入っている社会保険労務士(がん患者さんの傷病手当金に慣れているため)に確認するのが一番確実です。

健康保険組合にどのように質問したら良いのかについては、私の方でも一緒に考えることは可能ですので、お気軽にご相談ください。

外に出なくてもご自宅から受けられるので好評です。患者さんだけでなくご家族からも多く申し込まれています。

また、傷病手当金が該当しない場合や、傷病手当金が受給できるまでの期間、収入源が途絶えてしまう方に関しては、今後の支払い関係をどうにかしていかなくてはいけませんよね。

支払い関係がラクになる方法は、こちらをご覧いただくとわかりますよ。(⇒お金の面で安心して治療を続ける方法とは?)早く考え始めることで、それだけ解決も早くなります。

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筆者プロフィール

黒田 ちはる
黒田 ちはるがん患者さんのお金の専門家 看護師FP
千葉で10年間の看護師経験を活かしたFPとして、がん患者さん、ご家族専門の家計相談を行っています。2016年より全国から300名以上のご相談を担当してきました。
東京都、埼玉県内のがん診療連携拠点病院での家計相談員を務めています。

書籍:「がんになったら知っておきたいお金の話 看護師FPが授ける家計、制度、就労の知恵」(日経メディカル開発)