がん患者がコロナ支援制度を利用しづらい理由
年が明け、コロナ第3波の中、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けているがん患者さんからのサポート依頼は増加中です。
在宅ワークが行えない職種の患者さんが多いのですが、今回は昨年秋~冬にかけてがん患者さんから寄せられた声を基に、
①なぜ支援制度や助成金が受けられにくいのか
②受けられにくい中でどのように対処していけば良いのか
について、がん患者さんの家計改善専門の看護師FP黒田が解説します。
がん患者も二極化している、コロナ禍での就労状況
第1波のときからですが、職種により在宅ワークが可能な方と、難しく雇用が打ち切られた方との差が大きく、がん患者さんも例外ではありません。
在宅ワークが可能な方は、言い方は悪いかもしれませんが、よりご自身のペースで治療と仕事を両立しやすくなる機会を得られています。(コロナ禍でがん治療を継続していくためのお金の対処法)
しかしどうしても在宅ワークが難しい職場もあります。
以前は治療と就労の両立により、全国的に病院でも力を入れていたこともあり、がんによる退職や廃業は最新のデータ上では20%を下回っていました。
(参考:2020年10月発表国立がん研究センター患者体験調査)
しかし、現在は企業そのものの存続がかかっているため、このような悩みが寄せられています。
・休職中の方は「自分が戻る前に職場が残っているのか」(アパレル系)という不安を抱えながら抗がん剤治療を行っている
・飲食系の職場では、人を減らしている状況で時短では職場復帰しづらいと悩んでいる
・自営業の方は、長期治療を控えていたので、治療開始とともに店をたたもうかどうか悩んでいる
・患者さんも職場も以前よりも感染リスクを気にされていて、職種や職場の受け入れ態勢によっては復職のハードルが高くなり、休職期間を延長しているケースも
このように、コロナウイルス感染拡大の影響で、がん患者さんの就労状況の二極化が日に日に進んできている状況です。
就労が難しくなった場合には、通常だとコロナウイルス感染拡大による支援制度や助成金といった、収入を補うものが利用できるのですが、実際に相談を受けているとがん患者さんはそういった利用が難しいケースも少なくはないのです。
がん患者はなぜコロナの支援制度や助成金も利用しづらいのか
理由は、一言でいうと「求職活動を前提とした給付金や制度が多いため」です。
コロナウイルス関係で利用できる助成金などは「住宅確保給付金」や「持続化給付金」といったようなもの、そして各自治体で社会福祉協議会による貸付などがあります。
がん治療中の場合、体調による理由とコロナウイルスによる影響と両方受けての失職や休職であることが多いです。
そのため、治療が一段落して体調が回復し、求職活動が可能になってから、利用が可能となるのです。
コロナウイルス感染拡大の影響を受けているのは健康な方ばかりではなく、長期間の治療を行いながらという方もいる中で、このように助成金の制限があることはやるせない気持ちになります。
このような時には、この2つを実践していくと良いでしょう。
就労・助成金が難しいときの対処法
一つ目は「利用できる制度を取りこぼさない」です。
制度に関しては、高額療養費や傷病手当金は最大限効果的に利用できているのかです。
限度額適用認定証で終わりではありませんし、その先ももしかしたら返ってくるお金があるかもしれません。(外来での抗がん剤治療と処方薬の費用合算についてのQ&A)
傷病手当金は初発で治療開始のとき、退職するとき、再発転移のときなど、本当にケースバイケースなので、果たして自分に合った方法で利用できているのかを確認しましょう。(がん治療中に傷病手当金が支給されないケースと2回目も支給されたケース)
他にも、障害年金や障害者手帳、失業手当などがん治療中に利用できる制度はいくつかありますが、きちんと効果的に活用できているのかを確認していく必要があります。
二つ目のポイントは「払わなくても良い支出の整理」です。
収入に限度がある場合には、支出にも目を向けることも必要ですね。
支出の中には、どうしても生活に必要な住宅のお金や、今まで積み立ててきた生命保険などあるかと思います。
これは、むやみに解約したり、契約を変更してしまうと、かえって自分に不利になることも。
最大限自分にとって有利な支出の見直しができているのかが、今のコロナ禍で収入がこれ以上増えないという難しい状況で大切なことなのです。
第3波のオンラインサポートを振り返る
私の元には、治療費や生活費、教育費、ローンの支払いの悩みが全国から寄せられます。
ほとんどが貯蓄50万円を切ってから、もう少しで傷病手当金が終わる、がん保険の給付金が尽きてしまうといたタイミング。
制度の申請やローン関係の変更手続きは時間がかかります。
コロナ禍で就労状況も不安定な今だからこそ、これまで以上に3ヶ月後、半年後のお金の状況を予測しながら、早め早めに動き出すことが選択肢を多くし、家族全員が少しでも安心して治療生活を送れるコツだと考えています。
住宅ローンの解決策一つとってみても、治療スケジュールによって復職や収入が変わります。
ご家族の状況や資産状況、他の支払い関係によっても一人一人変わってくるのです。
全国でもまだ少ないが、がん治療中の生活について詳しいFPに対処方法を相談してもらえたらと思います。
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私、黒田は10年間の看護師経験を持ちながら、「高額療養費では解決できない、がん治療中のお金の悩み」が多くの患者さんにとって大きな負担であることを痛感してきました。FPのお金の知識を活用し、一人でも多くの方に安心した生活を提供したいという思いで、日々活動しています。
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筆者プロフィール
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10年間の看護師経験を活かしたFPとして、がん患者さん、ご家族専門に年間およそ180件の家計相談を行っています。
治療費捻出だけでなく、安心して治療が行えるための生活費や教育費、住居費の悩み解決を得意としています。
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