コロナ禍でがん治療を継続していくためのお金の対処法
がん患者さんのお金の専門家 看護師FP黒田です。
当事務所には、長期治療中の方、これからがん治療が始まる方、治療を終え在宅療養を選択される方、ご家族と様々な方からがんとお金に関する悩みが寄せられます。
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、対面相談からオンライン(主にZoom)相談に切り替えたところ、今までは難しかった遠方の方や体調が安定しない方など、全国から寄せられました。
先月はほぼ毎日オンラインにて面談対応しましたが、多くの方がコロナウイルスの影響によるがん治療の悩みを抱えていると実感しています。
この数ヶ月間相談対応した患者さんやご家族から寄せられた声をもとに、コロナ禍でがん治療を継続していくうえでの、治療費などお金の面での悩みと対処法を中心にまとめました。
今同じように治療をしている患者さんやご家族に、ヒントにしていただければと思います。
寄せられた声①「今後もがん治療が行えるのか」
「副作用やがんの症状とコロナの症状の見分けがつかないため、すぐに受診できなかった」
「かかっていた病院が集団感染し、治療スケジュールが変更となった」
「面会制限が厳しくなり、入院中家族や大切な人と過ごせない」
「治療後、治療の合間の旅行にも行けない」
この数ヶ月間、がん治療中の皆さんから寄せられた声です。
感染予防に留意しながら、主治医と治療スケジュールを決め直したり、処方を多めにしていただいたりと皆さん可能な限りのことを努めてきました。
それでも体調を崩したり、感染拡大の状況により、治療が遅れたりと、コロナの感染拡大が無ければ感じずに済んだ治療継続の不安を皆さん抱えています。
また、転医する患者さんにも何名かご相談の対応をしましたが、都道府県を超える際には2週間待機し、待機終了後の状況により新病院側が都道府県の状況を見ながら受け入れ体制を検討していくという流れが多いようです。
がんによっては進行が早い・ゆっくりとタイプがあるので、その都度病院(主治医)と患者さんで相談しながら対応※されていますね。
※コロナウイルス感染拡大対応に関しては、国立がん研究センターがん情報サービス「新型コロナウイルスに関する情報へのリンク集」もご参考にしてください。
制度の手続きや職場と復職のやり取り、そしてお金のやりくりに関しては、主治医の診断書によるところが大きく、この2週間待機は治療だけでなく、制度の申請にも影響しています。
2週間の待機期間中を有効活用するためにも、この期間にできることを整理し、確認事項や準備しておくことが大切です。現在当事務所でも継続的にサポートしている患者さん、ご家族がいますが、段階的に動けるようにこまめにコンタクトを取りながら進めています。
3つ目に記載した面会制限に関しては、この数ヶ月でオンラインが普及しつつあります。
ネットリテラシー(インターネットを使いこなす能力)の差が課題です。
高齢者やネット環境に慣れていない方に関しては医療従事者がサポートしながら行っているところが多いようですね。
通信環境や通信料の問題もありますので、今後各病院で対策が進んでいくことが予想されます。
コロナ禍ではオンラインを上手く利用することがポイント
感染予防には対面をなるべく減らすためにも、オンラインの活用が重要は重要です。
ここ数ヶ月間でかなりオンラインの体制は普及してきました。
手続き関係はオンラインで済むところも増えてきていますし、情報に関しても動画関係を中心に以前に比べ増えて便利になりました。
ただし、オンラインだけに比重を置くのは危険だと感じています。
対面でないと難しい本人確認や、やり取りの上での決定事項、実際に会わないとわからない部分が大きいので、オンラインだけで全てを済ませることは不可能だからです。
こういった理由からも、がん治療情報や制度の手続き、お金のやりくりに関しては、この2点に注意していくと良いでしょう。
①あくまで対面時間を減らすための下準備としてのオンライン活用
②今まで以上にインターネットでの情報収集には気を付ける
(公的な情報を中心に、細かいところは主治医や病院に確認する)
今まで以上に貴重となる対面でのやり取りですが、「ここは対面できちんと確認すべきこと」の区別を付けられるようにしていくことがより安心して治療生活を送るためのポイントなのではないでしょうか。
寄せられた声②「コロナ関係の助成金や給付金はがんで申請しても良いのか」
自営業で廃業するか悩んでいる
パートの方は減ってしまい収入に直結
正社員でもボーナスが減った、無くなった
コロナの影響で業績不振となり、解雇の対象となった
コロナウイルス感染拡大の影響により、ここ数ヶ月で仕事の状況が変わり、経済的に苦しくなっている方からの声です。
コロナ関係で助成金や給付金がありますが、患者さんが特に迷われているのは、「がん患者だから申請してはいけないのではないか」ということです。
各助成金、給付金に関しては、その患者さんの状況によっても大きく変わるので、ここでは断言できません。
しかし一緒に考え、検証していった結果申請できている方がいることも事実です。
もしも今この時期にコロナの影響で収入が下がっている方がいましたら、あきらめずに確認していただければと思います。
実際、「どこに確認すれば良いのかがわからない」という声も多いです。
そういった場合の相談場所はこちらをお勧めします。
・自営業の方が利用できる給付金関係や事業の廃業について:税理士(税理士会で無料相談あり)
・会社員が利用できる制度について:社会保険労務士(病院で無料相談会あり)
・様々な公的制度について総合的な相談:かかっている病院の医療ソーシャルワーカー
治療も制度も給付金関係もここ数ヶ月でかなり変わってきていますので、時間をかけて調べるよりも、詳しい人に確認した方が早く、確実です。
インターネットで下調べしておき、確認事項をあらかじめ相談先に伝えておき、当日要点の説明を受けるというのがよりスピーディーに的確な情報収集できるコツです。
コロナ禍でがん治療を継続していくためのお金の対処法
当事務所のサポートでは、給付金関係の確認だけではなく、FPが専門的に安心してがん治療が継続していけるための経済面の組み立て方を一緒に考えています。
自営業で働くことが難しくなったR.Uさん(仮名、60代、男性)は、「がん治療に加えてコロナでお金のことがバラバラで、どこから手を付けて良いかわからない。スッキリさせたい」という希望でサポートをご依頼されました。
1年先まで安心してがん治療が行えるよう、治療費や生活費に回す「経済面の組み立て方」を一緒に考えました。
✅健康保険、介護保険、その他公的給付で利用可能なものの確認
✅給付金、助成金関係の確認
✅生命保険の内容を確認し、保障内容が重複、保障過多のものを整理
✅家族の保障で足りないところを確認
✅スマホ代金の見直し、ネット環境の確認
✅住宅ローンの支払い方法の検討
✅リフォームローン、カードローンの返済方法について検証
✅相続に関しての確認(相続税や遺産分割)
同じ悩みでも、解決先によって解決方法が異なります。
つまり、最初に選択した手続き先によっては、意図する結果とならない場合もあるということです。
「こんなはずじゃなかった」とならないためにも、R.Uさんがどうしていきたいのかという希望が大切です。
今回もここを重点的に確認し、本当に選択した解決方法が妥当なのかを検証しました。
専門サポートの結果、受け取れる金額と浮いた金額を合わせると100万円以上になり、R.Uさんからも「当面の治療はこれで何とかなりそうです。」との感想をいただけました。
コロナ禍でがん治療を安心して継続していくためのポイント
がんで利用できる公的給付(健康保険や年金など)や、コロナで申請できる助成金、給付金には限度があります。
すべてを補えるわけではありません。
収入面でいつまでこの状況が続くのかも見えない状況でのがん治療というのは、今まで以上に資金面の不安を抱いている方がいることも事実です。
そういった意味で「コロナ禍でもがん治療が継続できる経済面の組み立て方」の重要性が高まり、FPへの専門的なサポートが増えているのではと考えています。
なぜ、抗がん剤治療の継続に悩んだ38歳の乳がんの彼女が、
たった1時間でコロナ禍にも関わらずお金の心配が無くなったのか?
筆者プロフィール
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10年間の看護師経験を活かしたFPとして、がん患者さん、ご家族専門に年間およそ180件の家計相談を行っています。
治療費捻出だけでなく、安心して治療が行えるための生活費や教育費、住居費の悩み解決を得意としています。
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書籍:「がんになったら知っておきたいお金の話 看護師FPが授ける家計、制度、就労の知恵」(日経メディカル開発)
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