がん治療中に復職できたけど、部署変更により収入低下した方へ

今回は部署変更で収入が減ったけれど、生活が安定した膵臓がんの患者さんのケースをがん患者さんのお金の専門家 看護師FP黒田がご紹介します。同じような状況の方は参考にしてください。

【患者さんの情報】

・40代、男性、営業職

・妻と子ども(小学生)の3人暮らし

・膵臓がんにて抗がん剤治療中

・有給休暇消化した後内勤に変わり復職

部署変更による切実な悩み

この患者さんは、治療をしながら復職ができた方です。

しかし、治療中は体調面のことを考え、運転や対面での業務を減らすという目的で内勤に部署変更しての復職となりました。

そこで出てきた悩みです。

営業手当5万円がつかなくなり住宅ローンの支払いが難しくなった。

ボーナス払いもある。

今まではやりくりできて貯蓄もできていた家計でしたが、手当がつかなくなったことと治療費がかかることでマイナス家計となり、住宅ローンの支払いやお子さんの教育費に不安を抱え、ご夫婦で相談に来られたということです。

【相談の実際】

住宅ローンのボーナス払いを「月々の返済に組み込む」のか、「返済期間を延長」するのかなど、いくつか方法はありますが、問題は現在の収入でそれが可能かどうかです。
家族全体の収入源とかかっているすべての費用を確認し、どのような返済プランが適しているのかをいくつかシミュレーションすることで、復職後の収入の範囲内で治療を継続し、かつ返済も可能な案を見つけることができました。

【感想】

「住宅ローンはまだ15年ほど残っているので、払えなくなったら売るしかないのかと思っていましたけど、手続きの方法を教えてもらえたので、良かったです。

何よりボーナス払いが楽になりそうなので、安心しました。

かかった治療費を取り戻せるとは思っていなかったので、足しになりそうです。

医療保険に入っていましたが、通院保障に入っていなくてどうしようと思っていたのですが、黒田さんにご説明いただき、大丈夫そうなので安心しました。

入っている保険なのに、中身をちゃんと知らなかったので、勉強になりました。

(奥さまより)

「今まで本人に任せていたので、この機会に手続きしようとしてみましたが、何をどうしたらよいのかわからなかったので、何か手続きできることがあれば教えてほしいと思い、相談を申込みました。教育費にいくらかかるのかがわかりました。

万が一のときも大丈夫だということがわかり、安心しました。」

ご感想ありがとうございました。

一番の気がかりだった住宅ローンの解決方法を一緒に見つけられ、今後の見通しを立てるお手伝いができて良かったです。

これから復職する場合の働き方は相談次第

2016年2月に「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」が作成され、がんを含めた反復・継続して治療が必要となる疾病を抱える方の、仕事を継続できる環境は以前に比べると整いつつあります。

復職の準備としては、休職中に今後の治療方針が定まってきた段階で主治医の診断書をもとに人事や上司との相談や産業スタッフの相談など行っていきますが、企業によって様々な復職の形がありますのでまずは上司や人事に相談してみましょう。

無理のない範囲で復職できるよう、部署変更、時短勤務、残業や休日出勤を配慮してもらう方もいます。

あらかじめ就業規則に書かれていたり、企業独自の両立支援プランなど作成されているところもありますので、職場に確認してみましょう。

まとめ)復職し収入低下した方が、お金の面でこれから行うこと

働き続けられること、復職できることは患者さん、ご家族にとって喜ばしいことですよね。

しかし今まで通りの収入を得られる方は少なく、やりくりに困る方が多いのです。

この悩みは元々の生活が「収入と支出がほぼ同じ」だった方や、「負債(ローンなど)を抱えている」方に多い傾向です。

もしこの相談者と同じように悩んでいたとしたら、

復職の時期は、新たな収入に合わせたやりくりを考えていける良いタイミングです。

何からはじめればよいのかわからない場合は、がん患者に詳しいFP(ファイナンシャル・プランナー)に相談し、復職後の収入の範囲でのやりくりをいくつかシミュレーションすると、解決策が見えてくる可能性は十分にあります。(→「がん患者がFPに相談すると何が変わるのか」)

筆者プロフィール

黒田 ちはる
黒田 ちはるがん患者さんのお金の専門家 看護師FP®
10年間の看護師経験を活かしたFPとして、がん患者さん、ご家族専門に年間およそ180件の家計相談を行っています。
治療費捻出だけでなく、安心して治療が行えるための生活費や教育費、住居費の悩み解決を得意としています。
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書籍:「がんになったら知っておきたいお金の話 看護師FPが授ける家計、制度、就労の知恵」(日経メディカル開発)