【お金編】抗がん剤治療をやめようか悩んでいるときの解決ポイント

がん治療の継続の悩みには、体調や今後の生き方など様々な原因がありますが、今回は悩みの一つであるお金にクローズアップします。

健康保険適応の治療法であれば高額療養費によりひと月の自己負担額には上限があります。しかし長期間の場合は、毎月毎月生活を維持しながら治療費を捻出しているというのが現状です。今まで貯めてきた貯蓄を切り崩している方もいます。

がんでお金の悩みというと「先進医療で300万かかるけれど、そこまで出せない。」といった内容を想像する方が多いかと思いますが、実際の頻度は少なくもっと生活の問題が絡んだ状況でがん治療の継続や延期についての問題が起きています。今回は治療を断念したケースと延期したけれど、アドバイスにより解決方向に向かっているケースをご紹介します。同じように困っている方にも参考にしていただけたら思い、相談者に承諾を得た内容に個人情報を変更して記載しています。

※ 厚生労働省 平成26年患者調査「傷病分類別にみた施設の種類別推計患者」、「平成27年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告」より

がん治療のお金の悩みが打ち明けずらい現状

がん治療の悩みの中には「お金の問題」が大きく関わっています。

お金の悩みというのはどこに打ち明けたらよいのかわからず、「病院で治療方針の話の場でお金のことを医療者に聞くのは、治療よりもお金を優先しているのではないかと思われそうでとても言えない。」という声も少なくありません。

がん治療の継続を断念したケース

40歳代男性のケースです。消化器系のがんにより、抗がん剤の治療をしていました。高額療養費の多数該当により、月々の治療費は5万円ほどになりましたが、継続的にかかっており、3年間の合計治療費は200万円を超えていました。

当時中学生だった子どもも高校生となり、大学受験を控えていました。進学費のほか住宅ローンも20年残っていました。治療を行っていない期間働けるかというと、これまでの治療の合併症で腹腔内膿瘍や肝機能の低下などで入退院を繰り返してきており、以前のような働き方は難しかったようです。

このような複雑な原因により、今後の収入増加が見込めないこと、そして継続した治療費の捻出が他の支出への影響が大きいため、治療継続を断念しました。

この決断に至った理由は患者さんご自身の気持ちが大きく占めていました。

「家族に辛い思いをさせてまで治療を行う意味があるのか…」

治療選択する際、病院では治療内容の説明とともにメリット・デメリットも説明します。それを聞いた上で患者さん自身が治療法を選択するのですが、この時治療の効果の可能性を数値で聞きました。この方は確率とお金と家族関係の間で悩んだそうです。

どこを優先するべきか。ここに患者さん自身の心境が大きく現れます。治療を断念するまでには様々な葛藤があったと思います。色々とご家族で話し合った結果でもありますが、医療者へは相談ではなく結果の報告だったそうです。この患者さんが特殊なケースではなく、研究の結果としても発表されています。

経済的理由で治療を変更・中止した患者は、医師1人当たり1ヵ月に、入院では1.5人、外来では1.6人である。経済的な理由による治療変更の内訳は、固形がんでは、予定した薬剤の変更が56%、無投薬が16%などであり、変更した事例は分子標的治療が半数を占める。

濃沼信夫「がんの医療経済的な解析を踏まえた患者負担の在り方に関する研究」2013

このような経済的な理由でがん治療の継続に悩んだ時の解決ポイントを2つご紹介します。

1つ目のポイントは医療者へ打ち明けること

医療者は早めに患者さんやご家族の経済面の悩みをキャッチできると、早めに対応することが可能となります。結果、治療や生活の選択肢は広がりますので、まずは一番身近な医療スタッフに打ち明けてもらえたらと思います。化学療法センターの担当看護師や相談支援センターの医療ソーシャルワーカー、看護師などに打ち明けている患者さんが多いですね。

タイミングは打ち明けられそうな時がその時なのですが、医療者としても早めに知っていればもっと良い方法があったかもしれないということもあります。

今回の治療スケジュール中だけでなく、「治療が終わった後数か月生活が成り立ちそうかどうか」を打ち明ける目安にすると良いでしょう。副作用や後遺症などが治療が終了した後も復職に影響しそうなのかを考えることで、収入の目安にもなるためです。収入の見通しが立てられれば治療費、生活費、その他費用も捻出することが可能ですが、見通しが難しいと予想されるようでしたら早めに対策を考えたほうが良いですね。重要なのは、患者さんはもちろんのこと、支える家族の生活も大きく変わってしまう前です。
治療費の分割払いや使えそうな制度の案内など、解決方法が見つかると思います。

使えそうな制度に関しては、高額療養費の世帯合算や傷病手当金、障害年金医療費控除などありますので、ご参考にしてください。

2つ目のポイントは就労、家計面からのアプローチ

治療費の分割払いや公的な制度を活用しても、治療費はゼロにはなりません。今までに比べて減った収入の中でどのようにして治療費を支払っていけばよいのかという悩みをお持ちの方には、この2つ目のポイントである「就労や家計面からのアプローチ」を試みてはいかがでしょう。実際に「来月の治療費が厳しいので、抗がん剤治療を延期している」と悩んでいた方にFPとして支援したケースをご紹介します。

がん治療を延期していたが、家計相談により解決方向へ向かっているケース

50歳代の男性で、妻とお子さん2人(高校生、中学生)と暮らしています。大腸がん肝臓転移で手術の後1年間抗がん剤と分子標的薬などの治療を行ってきました。今後も継続していく予定です。営業職でしたが、現在は副作用や体力低下により勤務先の配慮により事務職へ配置転換となっています。

配置転換により働き続けることは可能になりましたが、収入が減ったことで家計を圧迫し、さらに毎月かかる治療費の捻出が難しくなり、主治医へ治療の延期を申し出たという経緯です。

家計の内容を伺うと、住宅ローンを抱えていたことや、子どもの受験費用の捻出を優先した結果、治療費に回すことが厳しくなったということがわかりました。

がん治療はお金が続けば継続していきたいけれど、今後ずっと治療を継続していく見通しの不安、身体の不安も打ち明けられました。

お話を伺った結果、銀行に住宅ローンの返済額の相談を早急に行い、調整できた金額とその他家計全般から回せそうな金額を洗い出した結果、子どもの受験費用や治療費にも回せそうなことがわかりました。また、今後の体調の変化で休職の選択をした場合に利用できる制度として傷病手当金や障害年金の確認や、家計のやりくりの方法もそのタイミングで一緒に考えていくことをお伝えしました。今回のケースでは配慮してもらいながらの働き方かつ制度の活用では限界のあったお金の悩みに対し、家計面のアプローチで解決方向に向かうことができました。大切なのは制度、就労、家計それぞれ対応していくことなのです。

このような相談では住宅ローンの返済額の相談方法がん治療中の教育費の考え方の内容をお伝えしています。

治療に専念、安心した療養につながるポイントは適切な相談先

外来中心のがん治療がメインとなった今は、主に病院の外で起きる悩み「社会的な悩み」が大きくなっています。そしてこの悩みは家族構成や家計の内容によって各家庭異なります。元々あった家計の悩みががんの影響で複雑化しているケースもあります。

悩んでいる患者さんの多くは治療の影響もあり体調が思わしくありません。ご家族は患者さんの看病や付き添い、そして仕事や生活の維持のため、お金の解決に必要な情報収集や手続きに割く時間や体力が厳しい状況です。このように社会的な悩みが治療生活に及ぼす影響は大きいのです。心身ともに負担を最小限に治療生活を送るコツは、身近にいる医療従事者や私たちのような相談員を活用することです。

解決策を決定するのはもちろん患者さんとご家族ですが、決定するための選択肢の準備や手続きのお手伝いが可能です。そうすることで負担が軽くなり治療に専念できたり、安心した療養を送られている患者さんはたくさんいます。治療中のお金の悩みは打ち明けづらいものですし、困ってはいてもうまく説明できないこともあるかと思いますが、何が困っているのかを一緒に整理することから医療従事者や専門家はお手伝いすることが可能です。「このようなことは相談して良いのか」「みんなどのようなことで悩んでいるのか」という質問も多く寄せられていますので、お申し込みフォームのフリースペースよりお気軽にお問い合わせください。

(1/18追記)1月の個別相談(対面、電話、Zoom可)はあと1枠となりました。お急ぎの方は電話、Zoomにてご対応可能です。

 

お一人で悩まずに、お気軽にご相談ください

がん診療連携拠点病院にてがん患者さん、ご家族の家計相談を専門的に行っている看護師FP黒田が相談対応致します。

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