乳がんの治療費払える人、払えず悩んでいる人の違いと解決のヒント

がん患者さん専門の看護師FP黒田です。

当事務所の相談者のメインは40代の女性で、疾患別ですと一番多いのは乳がんです。

同じ乳がんだとしても、治療費が苦労せずに払えている人もいれば、払えずに治療を行うかどうか悩んでいる人がいます。なぜ同じ乳がんでもここまで違うのでしょうか。

答えは、「乳がんと言っても、一人一人状況が違う」ためです。

相談を受けていて感じることは、乳がんという疾患は他のがんに比べて罹患年齢も若く、そのため生活背景や社会保険の加入状況によってお金に関しては千差万別だということです。

そして何より同じ乳がんでもどのようなタイプなのかによって治療方針(治療期間も)が異なることも大きいです。

今回は乳がんの方一人一人が「悩みが他の人と違っていても当たり前、自分に合った解決方法を見つけてみよう」と思っていただくきっかけになればと思い、記載しました。

✅ どのような点で一人一人のお金が変わってくるのか(払える人と困る人の違いにも直結)
✅ 乳がんの方が悩んでいる、お金の情報収集の方法(解決のヒント)

このあたりを解説していきたいと思います。

「かかる費用」と「入ってくるお金」は一人一人試算してみないとわからない

がん患者さんの家計相談では「今後がん治療はどの位お金がかかりますか?」と聞かれることが多々ありますが、その質問に対し私はいつもこう答えています。

「平均的なデータや統計では、〇〇万円と言われていますが、○○さんの場合はすぐには分かりません。」

なぜだと思いますか?

理由は、がん治療のお金というのは、治療費だけではないからです。

つまり、治療費の支払いに困っている人というのは、治療費以外の生活のお金に関しても悩んでいることが多いので、治療費だけでは判断が難しいし、解決法も見出すことができないということです。

「かかる費用」と「入ってくるお金」によって大きく変わります。

同じ乳がんで、たまたま同じ抗がん剤治療を行ったとしても、あなたの情報をお聞きしないことには試算ができないのです。試算するためにお伺いしている内容はこちらです。

試算するために確認している情報

・健康保険の高額療養費の区分(自己負担額を確認)

・どの年金に加入しているか(国民年金なのか、厚生年金なのか、扶養に入られている方は国民年金)

・休職時に利用できる制度(公的、職場)

・生活費、住居費、教育費など医療費以外にかかるお金

・家族情報(子どものこと、親のことも) ・個室を希望しているのか

・貯蓄額(緊急時に使えるお金)や備えていたもの(民間の保険など)

・ウィッグや補正下着、弾性スリープなどの詳細な希望

まずはここを確認しないと試算できません。

高い自由診療を選択するかどうかということではなく、もっと基本的な情報なのです。

上記の条件がすべて同じ人はいないので、健康な時と同等の生活水準を保つためには、ひとりひとり必要な金額は変わってくるという訳です。

このあたりに関しては、拙著「がんになったら知っておきたいお金の話 看護師FPが授ける家計、制度、就労の知恵」の34ページにも記載していますので、お持ちの方は合わせてご覧ください。

同じ乳がんでも比べる必要はない。あなた自身が身体と生活が安心して過ごせることが大切

乳がんの患者さんでこんな方がいました。

「同じ乳がんなのに、あの人よりも治療が長引いているから治療費もかかるし、ウィッグ代もかかる。」

同じ時期に治療を行い、年齢や境遇も似ているとどうしても比べてしまうことがありますよね。

この気持ちはわかります。人間なので仕方のないことです。
特に乳がんの方は罹患数も多いため、周りを見渡すと自分と近い人がいると思います。
悩みや思っていることなど打ち明ける関係になることも自然なことです。

ただ、あなたが他の方と自分を比べる必要はありません。

女性の占める割合が多いがんであり、若い世代も多いため、仕事、生活、家事育児、家族関係など悩みは複雑に絡み合います。
しかし今までの経験上、全く同じ悩みを持った方というのは誰一人いませんでした。
治療期間によって治療費はもちろんのこと、仕事や生活への支障の程度が皆さん違うのです。

先ほどの発言を振り返ると、あの患者さんは初回の治療はがんの進行度だけでなく、ホルモン受容体、HER2、増殖能力等々タイプによっても様々なので、たまたま初回の治療が短期間であったことも考えられるのです。

今後の体調や治療のことは誰にもわかりません。

ですので治療期間や治療費に関しては、今だけを他の方と比べるよりは、一人ひとり違う今後の人生を考える方が自身の身体と心、今後の生活にとっても良いことだと伝え、サポートに携わりました。

疾患性による治療内容の多様性と女性という多種多様な生き方の方が多い乳がんだからこそ、同じ乳がんでも一人ひとりお金の悩みが異なるのだと感じています。

悩みが違えば、希望とすることも皆さん違いますよね。

あなた自身の身体と生活が安心して過ごせること

これが大切なのです。

お金に関してもセカンド・オピニオンが有効

では、乳がんの方はどのようにお金の悩みを解決しているのでしょうか。

「他の患者さんはどのようにしていますか?」

他の部位のがん患者さんからはこのような質問が多いのですが、乳がんの方からは少ない傾向があります。
なぜなのかと考えたところ、情報の流通量が他のがんの方に比べて多いためということがわかりました。

乳がんのイベントや患者会、カフェは多いですし、ネットでもつながっている方が多いです。
これは他のがんの方に比べてダントツです。
タイプ別の集まりも見かけたことがあるほどです。
治療のこと、お金のことなど情報量のすごさに驚くばかりです。

ですが、情報を求めて相談にいらっしゃる乳がんの患者さんがいることも事実です。
乳がんの方にとっての情報は十分だというのに、なぜだと思いますか?

「こういう制度の情報を聞いた(見つけた)けれど、本当に自分に合っているのか確かめたい」

あれ?と思いますよね。そうです。お金の情報に関するセカンド・オピニオンです。
乳がんの方の情報はあふれ返っている分、自分に合っているのかの判断に迷う方が多いのです。

そこから、他の方には言えなかった家族のことやお金の具体的な悩みの相談となる傾向が多いですね。

同じ乳がんでも、治療スケジュールが異なれば、社会保険も職場も違います。

家族背景や経済状況まで同じ人はいないので、具体的な悩みに対しては、情報を仕入れたらよいのかが難しいのです。

このような背景があり、情報があふれ返り、周りに分かち合える人がいるのにも関わらず孤独感を感じる原因ともなっています。

がんになってからの制度とお金の情報はナマモノ

情報があふれ返っていることに関して、あと一つ言えることですが、

制度やお金のやりくりはナマモノです。

治療は日々進歩しているし、制度改正や経済情勢により、同じ境遇のがん経験者の体験談では参考にならないことも多々あります。
過去のがん経験者のブログの内容を参考に制度やお金のやりくりをしてみた結果、今は通用しなかったという患者さんもいました。

情報収集する際に確認するポイントは、

いつの情報なのかを確認する

これが一番です。できれば1年以内の情報が望ましいです。
そして明らかに自分とは違う状況の情報を自分に当てはめないことが大切です。


お金や制度に関して、最新の情報や自分に合った方法を判断したい場合は、日々相談を受けている方に確認すると良いでしょう。新鮮な情報(最近の傾向)の中から、あなたに合った情報を選別して教えてくれます。

以下のような専門とする方にセカンド・オピニオンすると、あなたの悩みも早期に解決できる可能性がありますよ。

✅ 制度(傷病手当金や障害年金)、働き方や職場への相談方法は社会保険労務士
✅ 治療費の捻出方法やその他お金のやりくりのことはFP
✅ 税金関係のことは税理士
✅ 高額療養費や介護保険などは病院の医療ソーシャルワーカー

今後の治療生活に役立ちましたら幸いです。

治療費のやりくりや、お金のことに関して、どこから考えたら良いかわからない場合は、一度がん患者に詳しいFP(ファイナンシャル・プランナー)に相談し、気になる点を整理してみることをお勧めします。(→「がん患者がFPに相談すると何が変わるのか」)

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相談担当者:黒田 ちはる

10年間の看護師経験を持ち、現在も3つのがん診療連携拠点病院での家計相談員を務める、がん患者さん専門のFP(ファイナンシャル・プランナー)

制度だけでは解決の難しい患者さん個人の家計の悩みのサポートに専念するため一念発起し、2016年に看護師からFPに転身。

これまで千葉を中心に、悩みを抱える全国のがん患者さん、ご家族約250人のお金の相談を担当。

著書:「がんになったら知っておきたいお金の話 看護師FPが授ける家計、制度、就労の知恵」(日経メディカル開発)
全国で講演やテレビのコメンテーターも行っている。

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