シングルマザーで乳がん治療中、「教育費と治療費と借金の悩みが楽になりました」

がん治療中のお金の悩みが解決しにくい原因の一つに、「相談できる人がいない」があります。

特に、シングルマザーの場合は乳がんになる前からの責任感の強さもあることから、顕著であると考えられます。

今回の相談者K.Eさんも相談開始当初はその傾向が見られていました。

動画でもご覧になれます(11分間)

自己解決法がうまくいかなかった後悔を共有

相談者のプロフィール

  • K.Eさん、40代後半、大阪府在住
  • 大学3年の息子さんと二人暮らし
  • ご自身の両親には頼れない、元夫、元夫の両親とは音信不通で期待できない
  • 乳がんにより、抗がん剤治療中
  • 治療費は高額療養費区分「ウ」、健康保険組合より上乗せ保障の付加給付あり
  • 休職中で傷病手当金は手取り20万円
  • 治療費の支払いをきっかけにカードローンをはじめる
K.Eさん

健康保険組合から治療費が戻ってくるまでしのごうと、カードローンを組んでいたのですが、傷病手当金では返済がきつくて。
このままだと大学の授業料も厳しいです。

今までクレジットカードを利用したことの無い方が、がん治療をきっかけにカード払いを始めることも少なくありません。

特に治療開始の時期は高額療養費の多数回該当も無く、健康保険組合の付加給付があったとしても戻ってくるまでには時間がかかるため、カード払いでしのごうということですね。

返済できれば良いのですが、休職中は収入も減るため、返済が厳しくなるケースも。

実はK.Eさんはそれでもなんとかしのごうと、カードの返済を他のカード会社で借りるという方法を取っていました。

なかなか相談できる人がいなく、今までご自身のこと、そしてお子さんのことをすべて背負って頑張ってきたK.Eさんが悩みに悩んで出した結果です。

なので、まずK.Eさんと一緒に行ったのは、一人で抱え込まずに、様々な資源にも頼っていくという心の整理でした。

解決法が見つかれば速やかに行う

ご相談の一番の目的は「子どもを大学卒業させてあげたい」でした。

すでに借りるタイプの奨学金を増額していたので、乳がんになる前後の収入を確認し、返さなくても良いタイプの奨学金を一緒に確認しました。

これは急いで申請しなければいけないものでしたので、お子さんを通じて大学の方に確認していただき、速やかに申請手続きを行いました。奨学金と授業料の免除が一緒になっているものですので、ここがクリアできればお子さんの大学継続は期待できるということですね。

そして、クレジットカードの使い道も整理しました。

実は、治療費で使えるならと、生活費やその他もろもろクレジットカード払いにしていましたが、現金払いのものもあり、全ての支払いが把握できていない状態だったのです。収入<返済額であり、このままだと負債額が膨れ上がってしまいます。

今後安心して治療継続、生活していくためには、まずは多重債務(いくつものところから借りている状態)を解決しなければならないという結果になりました。

債務整理に踏み切れない心情とそれでも解決するために

多重債務を解決するためには、債務整理という法的な解決法があります。

借金を抱えるがん患者が治療を続けていくために

しかし、K.Eさんが債務整理に踏み切れない理由がありました。

K.Eさん

クレジットカードが使えなくなると、生活できません。

子どもの奨学金が入ってきたら、返済に回そうと思うのですが、それじゃダメですか?

K.Eさんの希望通りで奨学金で返済したとしても、返済3ヶ月分にしかなりません。

3ヶ月後にまた苦しい思いをするよりも、多重債務をリセットして新たな出発をする方がK.Eさんにとっても、お子さんにとっても生きたお金の使い道になるのではと伝えました。

多重債務をリセットするのは、法的な手続きを行うことで可能です。(色々と手続きもありますが)

重要なのはリセットした後のお金の使い方です。

実際、K.Eさんは収入で収まらない支出の状況でしたので、クレジットカード支払い、現金払いをひとまとめにし、家計管理を根本から変えていくという作業を一緒に行いました。

明るい兆しが見えてきた頃、K.Eさんからは

K.Eさん

今までどうにかなっていたし、これからもどうにか返済できると思っていたけれど、黒田さんにきっぱり言ってもらえて考えるきっかけになりました。

と涙ながらにおっしゃってくださいました。

つらいときだからこそ、一緒に目標を決めて伴走する相手が重要

大事なこと

治療で体調が不安定なとき、お金の複雑な悩みがあるときは、ひとりで抱えないことが一番大事です。

そんなときには、目標に向かって伴走できる相手がいると解決への第一歩が進みやすくなるのではないでしょうか。

公的な制度のことやお子さんとのかかわり方でしたら、病院の医療ソーシャルワーカーにお話すると良いでしょう。

個人的なお金の悩みは、FP(ファイナンシャル・プランナー)と一緒に考えていくと良いですよ。

筆者プロフィール

黒田 ちはる
黒田 ちはるがん患者さんのお金の専門家 看護師FP®
10年間の看護師経験を活かしたFPとして、がん患者さん、ご家族専門に年間およそ180件の家計相談を行っています。
治療費捻出だけでなく、安心して治療が行えるための生活費や教育費、住居費の悩み解決を得意としています。
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書籍:「がんになったら知っておきたいお金の話 看護師FPが授ける家計、制度、就労の知恵」(日経メディカル開発)