がんで障害年金を申請するとき、ゴールは受給ではない理由

障害年金の申請を行うがん患者さんは、ここ数年で増えています。

病状だけでなく、治療による後遺症や副作用などで申請できるということが広まってきていますし、病院でも説明されるようになってきていますね。

しかしながら、まだまだ必要な方に情報が届いていないということも相談の現場では痛感していますが…

今回は最近感じている障害年金申請~受給開始のがん患者さんに多い、お金の悩みについてがん患者さん専門の看護師FPがお伝えします。

障害年金は受給決定がゴールではなく、始まり

障害年金は2年~3年に一回診断書を提出しますが、要件に該当していれば継続して年単位で受給することができます。1ヶ月~3ヶ月単位で申請の必要な傷病手当金と違い、審査が通ると見通しが立ちホッとされる患者さんも少なくはありません。

しかしホッとできるのもつかの間です。このタイミングでの「困った」という家計のご相談はよくお受けします。

「傷病手当金より減った」「思ったよりもらえない」というのが理由です。

社会保険料など引かれますが、給料の約2/3受給できていた傷病手当金に比べると、やはり障害年金は少なくなる方が多いですね。

1~3級という等級によっても変わりますし、元々の給料の額やお子さんの有無によっても金額が異なってきますので、おおよその金額が知りたい方は、日本年金機構のホームページの計算方法により、概算はわかります。(等級は審査の結果によりますので、あくまで概算です)

障害年金受給が決まった後のがん患者さんの悩み

受給開始が決定すると、2~3年の収入は確保できるので、皆さん安心されますが、数ヶ月経つと障害年金の金額で生活をやりくりしていかなければならないという悩みに直面します。傷病手当金の範囲内で生活できても、障害年金になったら貯蓄を切り崩し始めたという方も少なくありません。

 障害年金を受給しながら、今までより無理のない範囲で働き続けている方もいらっしゃいます。

しかし年金以外の収入は難しいという方や、ご家族も看病などでなかなか収入が望めないというのが現状です。

ですので、FPの視点からは障害年金は審査が通ることがゴールではなく、決まった段階でその収入に合わせた支出へ見直していくこと、家族を含めた生活設計を考え直していく一つのタイミングであると考えています。

制度の利用が実現したということは、時間をかけ、労力も使うので、大変喜ばしいことです。

しかし制度の情報が広まるにつれ、制度が利用できることがゴールになりがちだと感じています。

働く収入に比べるとどうしても制度での収入は減ってしまいますし、継続的な治療費捻出のため、家族全体の生活の維持のためにも家計を一緒に考えていくことが大切だなと実感しています。

このあたりに関しては、拙著「がんになったら知っておきたいお金の話 看護師FPが授ける家計、制度、就労の知恵」の263ページにも記載していますので、お持ちの方は合わせてご覧ください。

障害年金の受給までの生活も考える

「障害年金は審査に時間がかかる」ということも念頭に置きましょう。

もしも現在収入源が途切れてしまっている場合は、他に何か収入源となるものは無いか、そして今後の費用面をどうしていくかを早急に考えていく必要があります。

障害年金受給までの生活が心配…そういった方が受けられています。

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筆者プロフィール

黒田 ちはる
黒田 ちはるがん患者さんのお金の専門家 看護師FP®
10年間の看護師経験を活かしたFPとして、がん患者さん、ご家族専門に年間およそ180件の家計相談を行っています。
治療費捻出だけでなく、安心して治療が行えるための生活費や教育費、住居費の悩み解決を得意としています。
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書籍:「がんになったら知っておきたいお金の話 看護師FPが授ける家計、制度、就労の知恵」(日経メディカル開発)