がん治療で住宅ローンが心配なとき、銀行に相談に行く前に知っておきたいこと
「がん治療でお金がかかり、住宅ローンの支払いが心配」と悩んでいる方に向けた内容です。
看護師経験のあるファイナンシャルプランナー(FP)であり、現在はがん患者さんとその家族の家計相談を専門に行っている看護師FP®黒田が、がん治療中に住宅ローンの支払いで心配なときに知っておきたい対処法を解説します。
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患者さんのよくある悩み
- 傷病手当金だけでは住宅ローンの支払いが難しい
- 職場で配置転換となり、手当が減って困る、どうやって支払えばいいのかわからない
- 住宅ローンのために無理して働き続けているが、正直つらい
- 支払いが厳しいと銀行に伝えると、すぐに競売られてしまうのではないかと不安
お金が不安な時、思わず取ってしまいがちな行動
困ったとき、多くのお金や光熱費の節約や、子どもの大学費用の準備をしていたお金を住宅ローンの支払いに充ててしまいがちです。しかし、これは一時的な対処法に過ぎません。
無理な節約や近い将来使い予定のあるお金の取り崩しは、長期的に見て状況を悪化させる可能性があります。
住宅ローンの対処法は治療の見通しによって変わります
がん治療があと1~2か月で終わり、復職の目途が立っている場合は、上記のような方法でも解決できるでしょう。
しかし、3ヶ月以上治療が続く場合は状況が変わってきます。
治療が3ヶ月後に終了したとしても、体力や免疫が回復するまでに時間がかかります。 また、しびれなどの副作用が数ヶ月続くこともあります。
そのため、以前の収入に戻るまで復職してからも時間がかかる可能性があります。これらのことを踏まえた上で、最適な対処法を考えることが重要です。
他にも参考になる情報がありますので、こちらの記事もぜひご覧ください。
3ヶ月以上治療が継続の場合に検討すべき「リスケジュール」
住宅ローンの返済に困ったとき、借りている銀行などに返済方法の相談ができるということはご存じでしょうか?
以前のご相談者からは、次のような声がありました。
今までのご相談者で知らなかった方からは、
「怖くて銀行に相談できません」
「病気で働けないと、すぐに競売にかけられてしまうのではないか」
また、すでに銀行に相談してみた方からは、
「相談してみましたが、病名を伝えた途端に追い返されてしまいました」
「治療費がかさみ、他の費用もかかって大変だったのに、理解してもらえませんでした」
あなたは銀行への相談に対して、どのようなイメージをお持ちでしょうか?
審査に通った場合のみ、利用できるものです。 ただし、しっかりと準備を整えて相談すれば、対応してもらえる可能性が高くなります。まずは、リスケジュールの仕組みを知り、必要な準備を進めていきましょう。
がんに限らず、病気やケガ、妊娠・出産、介護などで働けなくなり、住宅ローンの支払いが難しくなった場合に、多くの方が利用しているのが「リスケジュール」と呼ばれる返済方法の相談です。
銀行としてもローンを滞納するよりは、無理のない範囲で返済し続けてもらえることが好ましいと考えています。そのため、リスケジュールに応じてくれる可能性があります。
まずはリスケジュールに適しているか確認しましょう
銀行への相談が正しいかどうか考えることが重要です。これまでの相談経験から、リスケジュールに向いている方の特徴がわかりました。以下に該当する場合は、リスケジュールの準備を行くと良いでしょう。
リスケジュールが向いている方
- 今後半年~1年で治療が一旦落ち着き、復職して収入が回復する見込みがある
- 生活費・治療費など動かせる預貯金が1年分確保できそう
- 傷病手当金など制度からの収入や他の家族の収入がある(固定収入)
- 他に借入金がない、固定資産税、住民税など税金の滞納がない
- マンションの場合、管理費や修繕積立金、駐車場代の支払いは問題ない
- 現時点での完済年齢が70歳未満
- 今まで住宅ローンの滞納をしていない
この中で一番重要なのはどれだと思いますか?
「治療期間が1年未満」です。
(税金の滞納も同じくらい大切ですが)
がんの場合、治療の見通しを立てるのが難しいこともあります。特に再発・転移により、1年以上治療が続く予定の方やほかの支払いが重なっている方は他の方法を検討したほうが手持ちの現金をより残しておくという視点で考えると賢明かもしれません。その理由は、リスケジュールの仕組みに表れています。
リスケジュールのしくみ
リスケジュールとは、毎月やボーナス月(ボーナス払いが設定されている場合)に行っている住宅ローンの返済を一時的に軽減する仕組みです。
主な方法としては以下の4つがあります。
① 月々の返済額を軽減
② ボーナス払いの中止や減額
③ 返済期間の延長(期間を長くすることで、1ヶ月あたりの支払い額を軽減)
④ 一定期間の返済を猶予(元金は据え置きで、利息のみを支払い)
多くの方は、4番目の「一定期間の返済を猶予」を選択しています。 なお、これは元金(ローンを組んだ元々の金額)がそのまま置かれるという意味です。つまり後々の支払いが軽くなるわけではありません。
チェック項目で治療期間が1年未満というのはこういった理由です。リスケジュールが有効かどうかは、現在だけでなく将来のリスクを考慮することが重要です。生活が成り立たなくなってしまっては本末転倒です。
1年後どうなるかは誰にも分かりません。しかし、もし1年後に「また支払うが厳しい」と感じる可能性が少しでもある場合は、手元に現金があるいま、家族と相談してください。今後の住宅ローンや住む場所について計画を立てることをお勧めします。
リスケジュールに該当しない方でも、他に解決策はありますので、ご安心ください。
この部分は、拙著「がんになったら知っておきたいお金の話 看護師FPが授ける家計、制度、就労の知恵」の106ページにも記載していますので、お持ちの方は合わせてご覧ください。
リスケジュールを考えている患者さん、ご家族がこれから行うこと
がん患者さん、ご家族がこれから考えていくリスケジュールのポイントはこの3つです。
- 銀行に相談する準備をする
- 銀行の住宅ローン担当者に予約の電話をする
- リスケジュール後の生活を考える
この3つの準備を整えてから銀行の担当者に電話で予約すると、スムーズに相談を進めることができます。
- 住宅ローン返済予定表
- 疾患名の分かるもの
- 仕事復帰した後の業務内容や賃金の試算、家計の状況がわかるもの
1の住宅ローン返済予定表は年末に金融機関から送られてきているものです。
2はもしも借入先の金融機関で住宅ローンが支払えない理由を聞かれたときに、口頭でお伝えすれば大丈夫ですが、もしも診断書などの提出を求められたら主治医へお願いしましょう。
3が重要です。ここが一番金融機関としては数字で知りたいところになります。
「今後、どのくらいなら返済していけそうなのか」「貯蓄や保険の給付金がある場合は住宅ローンにまわせないのか?」「家族の収入は?」といった内容が良く聞かれる傾向にあります。
ご自身でも準備は可能です。Excelが使える方ならそう時間はかからないでしょう。
「払うことが難しい」という気持ちをどのように数字の見通しで伝えられるかがポイントです。
早めの行動がカギ
支払いが難しいと感じたら、払えなくなる前に早めに行動することが重要です。なぜなら、3ヶ月滞納した時点で団体信用生命保険が使えなくなったり、滞納によって信用情報に傷がつく可能性があるためです。
リスケジュールは申し込んでから審査があります。
より手元に現金を残しておくためにも、2ヶ月後の支払いが難しいと感じたら早めに動き出しましょう。
ただし、リスケジュールは期間限定の緊急対処法です。
浮いたお金の使い方次第では1年後に困ることも。
治療費・住宅ローン・他の支払いなど、
総合的な資金計画を立ててから行うことを強くお勧めします。
後々困らないための、
「リスケジュールが本当に妥当な解決方法なのか」
「リスケジュールで浮いたお金の有効活用法」
が考えるうえでの大切なポイントです。
ちなみにフラット35をご利用の方は、「月々の返済でお困りになったときは」をご覧ください。
リスケジュールや他の解決策についてのご相談も含めて、あなたの不安や悩みに寄り添い、最適なアドバイスを提供いたします。お一人で悩まず、ぜひ一緒に解決策を見つけていきましょう。お気軽にご相談ください。
私、黒田は10年間の看護師経験を持ちながら、「高額療養費では解決できない、がん治療中のお金の悩み」が多くの患者さんにとって大きな負担であることを痛感してきました。FPのお金の知識を活用し、一人でも多くの方に安心した生活を提供したいという思いで、日々活動しています。
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筆者プロフィール
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10年間の看護師経験を活かしたFPとして、がん患者さん、ご家族専門に年間およそ180件の家計相談を行っています。
治療費捻出だけでなく、安心して治療が行えるための生活費や教育費、住居費の悩み解決を得意としています。
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