「がん保険に入っていたのに治療費に困った!」とならないために

生命保険証券

がん患者さんとご家族を専門とした家計相談を行っていると、「がん保険に入っていなかったから、今治療費で困っている」という言葉は、相談者からも多く聞かれます。

しかし、以外にも多いのが、「がん保険に入っていたのにキツイ」です。

  • 診断給付金の金額が多い保険
  • 診断給付金が複数回出る保険
  • 治療した月にまとまった金額が給付される保険
  • 治療費が実費で出る保険

と現在がん保険のバリエーションは多くありますが、私はがん患者さんのお金の専門家としてがん保険の給付金を使う相談者を間近で見てきた視点から、「がん保険の給付金があってもお金に困る方は一定数いる」という考え方を持っています。

看護師FP®
黒田

がん保険に入っていて経済的に助かっている方は圧倒的に多くいますし、がん保険自体は否定していません。

一部困っている方もいるという事実、そしてなぜ困っているのかをがん患者さんが早い段階で知り、対処できることでせっかく入っていたがん保険を有効活用できたら良いなと思い、この記事では、がん保険の給付金があってもお金に困る原因3つとその対処法を順番にお伝えしていきますね。

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(原因①)公的制度を活用しきれていないため

ピラミッド

「がん保険に入っておけば良かった」よりも大切なこと】でもお伝えしていますが、がん保険は保険会社が定めた給付金の決まりに該当すれば、まとまったお金が給付されます。

給付により助かることは事実なのですが、早い段階でこの給付金を使い終わる方がいました。

理由は公的制度を活用できておらず、公的制度の分まで給付金を充てていたためです。

どういうことかと言いますと、例えば高額療養費の世帯合算

高額療養費自体や限度額適用認定証についてはご存じの方が増えた印象です。

しかし高額療養費の世帯合算についてはまだまだ知られていないことも多く、加入している健康保険によっては「あっこれは合算できるのでは?」とご自身で気づいて手続きしないと戻ってこないのです。(→世帯合算についてはこちらから)

そして最近では少なくなりましたが、傷病手当金をご存じで無い方も中にはいらっしゃいます。

在職1年未満の方※は退職後には傷病手当金は利用できませんので、在職中に気づいて申請しないと「本当はもらえていたかもしれないお金」がもらえないなんてことも。派遣社員の方に多く見られていますね。

あとは、体はきついのに良かれと思って就労日を増やしたことで、傷病手当金が利用できなかった方もいました。

傷病手当金は要件に該当しないと利用できませんが、がん治療中は休職や退職なども絡んでくるため、タイミングを見計らって要件に該当するのかを確認していかないと、利用できないということが起きてしまいます。

公的な制度というのは、きちんと利用できるかどうかで月数十万円変わることもあるので、ばかにはできません。

この場合には、早い段階できちんと公的な制度にたどり着けることで未然に防ぐことも可能です。

看護師FP®
黒田

一番身近なのはかかりつけ病院のがん相談支援センター(病院によって名称が異なります)ですね。

専門の相談員(医療ソーシャルワーカーなど)に制度の確認をされると良いですよ。

※退職までに健康保険組合に1年以上加入していないと、傷病手当金の退職後の継続給付は利用できません。

(原因②)元々赤字家計、または借金があるため

クレジットカード

がん保険の給付金が赤字補てんに使われることも少なくはありません。

もちろん給付金の使い道は限定されてはいませんので、どう使おうとご本人の自由です。

しかし、がん治療が始まり収入が下がったため、毎月の借金返済や赤字補てんに利用した結果、100万円の診断給付金が5ヶ月ほどで尽きてしまった方もいました。

せっかくがん治療や治療を続けるための生活のために備えてきたがん保険が、マイナス部分の補てんであっという間に無くなってしまうのは、きっと加入した目的から大きく外れてしまっていますし、一時しのぎでしかありません。

大事なのは、今までのマイナス部分の補てんに使わないことです。

今だけでなく、がん保険の給付金が尽きてしまい払えなくなった時のことも考え、早い段階で家計の見直しや借金の対応策を考えていくことで、がん保険の給付金を本来の使い道に戻すことも可能です。

これ以上マイナスを続けないために、第三者の意見を聞いていくことも有効です。

看護師FP®
黒田

ご自身での家計の見直しが難しい場合は、家計再建を得意としているFPに相談してみることも一つの方法ですよ。

借金を抱えるがん患者が治療を続けていくために」もご参考にしてみてください。

(原因③)思った以上に治療が長引いたため

筆者の講演資料より抜粋

そしてもう一つは、図のように「思った以上に治療が長引いていた」という理由です。乳がんや大腸がんといった、手術が可能な部位で治療開始の段階で比較的見通しが立っている方に多い傾向です。

制度も利用できているし借金返済などもないのに、なぜ?という感じで治療開始1年を過ぎたあたりでのご相談が多いですね。

治療開始当初は見通しが立っているし、資金面も調達できているので「どうにかなるだろう」と思っていたけれど、治療の効果や副作用で想定していた治療の変更をせざるを得なかったり、検査の結果予定よりも長く治療を続けていくことになったという方々です。

資金面が底を尽きてきた段階で気づくことも多いため、対処の選択肢が狭まってしまうこともしばしばあります。

想定外な出来事が続いたこともあるため、患者さんやご家族も「なぜこんなことに」と思ってしまうことが多いというのが実情です。

健康な時の収入に比べ減少した部分の補てんに充てていたり、教育費のピークの時期に重なったり、急きょのお金に充てているということもありました。

(原因2)でご紹介した元々の赤字家計ほどではないためか、「治療が終われば元に戻るから」とあまり問題視していないことも多いのですが、治療が終了した後もすぐに万全の状態で職場復帰できる方もいれば、そうではなく少しずつ段階を経ていく方もいます。

ですので、治療終了と収入の復活の時期は別と考えておくことで、少し余裕を持たせたお金の計画が立てられるかと思います。

治療が終わる時期というのは誰にもわからないことですが、時期を決めて今後のお金の方向性を見直していくことでマイナスを最小限に食い止められることもあります。

今までの相談者の経験からすると、大体皆さん治療開始から1年経過したあたりの傷病手当金の終わりが見えてきた段階で「今後どうしよう」となることが多いです。

看護師FP®
黒田

解決策としては、治療から6ヶ月経過したタイミングで「今後このお金の状態が続いても大丈夫かな?」と踏みとどまって考えられると良いのではないでしょうか。

人に寄りますが、時期的に一度治療の評価のための検査が設定されている時期かと思いますので、このタイミングで今後の治療方針とともに考えていくことも良いかと思います。

病気もお金も「正しく恐れることが大事」

がん保険の給付金というのは、単体で今までの収入を永遠に保持できるものではありません。

入っておいたことは良いことなのですが、がん保険だけで全てを賄うことは難しいということですね。

公的保険を補完するものですので、公的保険を使いこなした状態でないと早い段階で尽きてしまいます。

では健康な時に年収分の給付金を準備しておけば良いのかというと、それはそれでかなりの保険料負担となり、家計のバランス的には良いものとは言えませんよね。

がん保険に入っていた方は助かっていることは事実ですが、お金の安心が長続きし治療を継続していけるためにも、早い段階でがん保険の給付金と公的保険、そして貯蓄をどのように使っていくのかを考えていけると良いですね。

失った(使った)お金は戻ってきません。

せっかく備えていたがん保険や貯蓄を有効活用しましょう。

体もお金も気づいたときがタイミングです。

先々のことは誰にもわかりませんし、不安になることもありますが、一度踏みとどまり今後のことを考えていくことで、その時の最善の方法が見つかるはずです。

メルマガの方からも具体的な考え方や行動についてお伝えしていますので、ぜひご活用くださいね。

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筆者プロフィール

黒田 ちはる
黒田 ちはるがん患者さんのお金の専門家 看護師FP®
10年間の看護師経験を活かしたFPとして、がん患者さん、ご家族専門に年間およそ180件の家計相談を行っています。
治療費捻出だけでなく、安心して治療が行えるための生活費や教育費、住居費の悩み解決を得意としています。
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