2022年4月から変更となるがんの先進医療が、がん患者に及ぼす影響
がん患者さんからの質問も多い、先進医療の重粒子線治療、陽子線治療が今年の4月よりまた大きく変わる可能性があります。
先進医療は以前より標準治療(健康保険適応の治療のこと)よりも良さそうというイメージを持たれている方も多いため、先進医療の概要と今年の4月から変更の可能性となる点、そして患者さんやご家族が考えていくことについて、がん患者さんのお金の専門家、看護師FP®の黒田が解説します。

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先進医療とは
保険診療として認められていない医療技術の中で、保険診療とすべきかどうかの評価が必要であると厚生労働大臣が定めた治療法(評価療養)です。効果や安全性を科学的に確かめる段階の高度な医療技術で、実施できる医療機関が限定されています。
引用:国立研究開発法人国立がん研究センター がん情報サービス

黒田
効果や副作用などを評価している最中の治療なので、良いと評価されれば標準治療(健康保険適応)となりますね。
がんの先進医療は何があるの?
高額な費用がかかる、「重粒子線治療」や「陽子線治療」のほかにも、がんの先進医療はこのようなものがあります。
がんの先進医療
- 遺伝子検査
- 前立腺針生検法
- 抗がん剤の静脈内+腹腔内投与
- ラジオ波焼灼療法
- 生検
- 抗がん剤内服+静脈内投与+分子標的薬
詳細は厚生労働省の「先進医療の各技術の概要より」をご参照ください。

黒田
がんの部位や進行度などによって適応が変わってきます。
重粒子線治療と陽子線治療

重粒子線治療も陽子線治療も放射線療法の一種です。
通常の放射線療法との違いは、「病巣の深さや大きさに合わせて、このピークの深さや幅を調整することで、病巣のみに効率よく線量を集中し、正常組織への線量を少なくできる」ことです。
重粒子線治療と陽子線治療の今までの経緯とこれから
- 平成 13 年7月
- 限局性固形がんを適応症として陽子線治療 が開始
- 平成15 年 11 月
- 限局性固形がんを適応症として重粒子線治療が開始
- 平成 24 年 10 月
- 先進医療Aとして実施
- 平成 28 年度診療報酬改定時
- 小児腫瘍に対する陽子線治療、切除非適応の骨軟部腫瘍に対する重粒子線治療が保険適用
比較対照を厳格に設定するなど重点的な評価が必要な適応症(前立腺がん、肝臓がん、肺がん、膵臓がん等)については、先進医療Bに切り替えて実施
- 令和元年 12 月
- 第 81 回先進医療会議における議論では、先進医療Aとして実施されている適応症について、示されている科学的根拠が十分ではなく、更なるエビデンスを集積することが望ましいとされた。
- 令和3年 12 月
- 学会より提出された報告書の内容を踏まえ、既存治療(X 線治療等)と比較して、生存率等の臨床的アウトカムの改善が明示的に示された以下の適応症については、「十分な科学的根拠があるもの」として、評価され令和4年4月より以下疾患に対しては公的医療保険が適用となる可能性がある。
・大型の肝細胞癌
・ 肝内胆管癌
・ 局所進行膵癌
・ 大腸癌術後局所再発
・ 局所進行子宮頸部腺癌(重粒子線治療のみ検討対象)
※ いずれも、切除不能のものに限る。
厚生労働省:粒子線治療に対する科学的評価について(案)
日本経済新聞「粒子線治療、4年ぶり保険適用拡大へ 肝内胆管がんなど」
東京新聞「粒子線治療の保険適用を拡大 肝細胞がんなど5種類追加」
先進医療から標準治療となることでの、がん患者さんへの影響

今後も医学的根拠が認められた部位のがんに関しては、先進医療から公的医療保険適応である標準治療へと変更になることが予想されます。
患者さんとして大きく変わるのは、やはり費用面ですね。
「先進医療の方ががん保険の先進医療特約が使えて負担が少なかった」とおっしゃる方もいます。
今までは先進医療として高いと300万円以上の高額な費用がかかっていましたが、加入している医療保険やがん保険によっては先進医療特約で費用負担がない方もいました。
しかし今後標準治療になった際には3割負担、2割負担(年齢や収入により変わります)となります。ただ、高額療養費も利用できますので、実質は自己負担額までの支払いとなります。
しかし変わらない点もあります。
治療に対する考え方は変わらない
「重粒子線治療と陽子線治療への考え方」は変わりません。
先進医療から標準治療になったとしても、他の治療方針も含めてその患者さんに一番合った方法が選択されるので、患者さんが受けたいからといっても必ずしも受けられるわけではないということです。
該当する部位のがんや病状、治療経過なども含めて主治医が判断しながら治療方法の一つとしてご案内されます。
患者さんやご家族としては、「より効果や安全性が確かめられた標準治療なんだ」と安心感を持ちつつ、治療方針の一つとして今後の体のことを第一優先に主治医と一緒に検討していくことがこれからも大事だと考えています。
がん治療は日々進歩、大切なのはお金の不安を最小限にしていくこと

がん治療はまだまだ確立されておらず、日々新しい治療が認可され続けています。
高額療養費が適応されたとしても長期にかかる場合にお金の不安は拭いきれません。
制度を適切に利用しながらお金の不安を最小限にしていくことが治療生活を安心して過ごせると良いですね。
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筆者プロフィール

- がん患者さんのお金の専門家 看護師FP®
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10年間の看護師経験を活かしたFPとして、がん患者さん、ご家族専門に年間およそ180件の家計相談を行っています。
治療費捻出だけでなく、安心して治療が行えるための生活費や教育費、住居費の悩み解決を得意としています。
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