がん患者が一人暮らしを続けるために気になる「お金のこと」
一人暮らしの方やその友人、関わっている医療従事者に向けた内容です。
一人暮らしの方は年々増加傾向ですが、がん患者さんも例外ではありません。
治療の方針や今後の生活、お金のことや各種手続き、契約関係など、がん治療を行う上で一人暮らしであることはとても負担が大きいですよね。
これまでの生活スタイルを大切にしながら、がん治療を継続していくポイントをがん患者さんのお金の専門家 看護師FP黒田が解説します。
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同居家族のいる方と違うのは、「お金の管理」と「手続き代行の壁」
・「手術入院の準備、入院する際のお金の管理が大変」
・「抗がん剤の副作用でつらいときに買い物や税金支払い、引き落とし口座の確認など手間取った」
・「障害年金の申請手続きが一人で大変だった」
・「リンパ浮腫で動きづらく、身の回りのことに時間がかかるようになった」
・「今まで一人で考えてこなせていたことが、こんなにも大変だとは思わなかった。ちょっと銀行までが難しい。けど誰にも頼めない」
これらは、いままでお聞きしてきた一人暮らしの方からの生活とお金に対する声です。
お金の管理については、体調面を予測し生活やお金を考えたうえで先回りして管理することになるので、簡単なことではないですよね。
体調が悪くてもお金の手続きを忘れないように、スケジュール帳に細かく書いている方もいました。
予測の大変さに加え、手続きが難しいことも一人暮らしの方が苦労している点です。
例えば働くことが難しくなり、障害年金の申請できるということがわかったとしても、入院中で診断書を受け取りに行くことができない、体力低下で手続きに行くことが難しいということがあります。
たとえ別居している家族、親族がいたとしても、「今まで一人で暮らしてきたから、家族に面倒見てもらうのが申し訳ない」と一人で抱え込んでしまう方もいます。
このように今まで当たり前に一人でこなせていた生活やお金関係の細々としていたことも、がん治療中は体調の変化により難しくなることがあるのです。
同居中の家族がいれば、先々を見越してお金のやりくりや制度の申請、手続き関係をしてくれることも、一人暮らしの方がお金の管理や制度を利用していくためには、
「前もって手続き(を考える)」
ということが必要となるのです。
がん治療中に一人暮らしを手助けしてくれる制度やサービスはないのか
公的な制度だと成年後見人制度や社会福祉協議会の日常生活自立支援事業がありますが、利用者は限定され、時間もかかることがあります。
成年後見人制度は契約関係を代わりに行ってくれるものですが、判断能力が審査基準となっています。
そのため高齢でないがんの方で利用される多くは、脳転移や肝臓機能の低下などで判断能力が低下した場合などです。
家庭裁判所の手続きが必要なので、2~3か月程度の期間を要します。
正直なところ、判断能力があるけれど体調の波が原因で手続き関係が難しいがんの方にとっては使いづらい制度です。
しかし、判断能力がしっかりしているときに任意後見契約を結んでいる方もいます。(前もって後見人を予約するような意味合いです)
社会福祉協議会の日常生活自立支援事業では、口座の管理などを行ってくれます。
しかし審査あるのですぐには行えません。
基本的に在宅療養中の方の支援なので、緩和ケア病棟に入院など、長期入院中の方は該当しないこともあります。
ちなみに在宅へ移行する方は入院中に申請する方もいて、病院から医療スタッフが申し込むことも可能です。
民間のサービスでは、契約のもと手続き関係や入院時の保証人など行ってくれるNPO団体があります。
治療の影響や病状により、急な体力低下なども起こらないとも限りませんので、事前に調べている方もいます。
ここまではお金の管理について説明しました。
仮に管理は任せられたとしても、お金の使い方はあなた自身が考えなくてはなりませんよね。
ご紹介した制度やサービスを受けるための費用面についても考えていく必要があります。
引き落とし関係が滞りなく行えるためには、口座への必要金額の準備もそうですが、その引き落としが今後順調に支払っていけるのか、赤字にならないためのお金のやりくりを考えなくてはなりません。
こういった効果的にお金の管理をしていくための使い方のサポートはFP(ファイナンシャル・プランナー)が適しています。
一人暮らしを続けていくための工夫
いくつか、実際に聞かれた質問をもとにお金の管理のポイントをご説明します。
●スマホ料金プランはショップに行かなくてもネット上で可能
➡ただし、どのプランに変更した方が良いかは調べたり、携帯会社へ確認する必要あり(ネット上で合うプランを診断してくれるサービスもある)
●口座の管理はネットバンキングやネット銀行を利用。支店の担当者に病室や自宅に来てもらっている方も。
●買い物はネットスーパーを利用している方もいる。買い物の負担もだけど、カード決済にすることで現金が足りないということが少なくなる(ただしクレジットカードの管理が大切)
●障害年金の申請に関しては社会保険労務士に代行することも可能、成功報酬型なので、着手金3万円程度(のところが多い)が最初に必要(代行するための経費)
ネットを活用しつつ、人でないと無理なところは専門家やサービスを利用しているというのが一人暮らしの方に多い傾向です。
体調が悪いときに友人など自分以外の方がお手伝いできるように、これらの手続き関係はファイリングしておくと良いですね。
制度に関しては、家族で委任状がある場合に行える手続きが多いので、家族以外は難しいことがあります。
友人から「何か手伝えることはない?」と聞かれた場合は、必要書類を準備してもらうことや、一緒に電話をかけてもらう、手続きの同行をしてもらうといったことをお願いすると助かると思います。それに何より心強いでしょう。
一人暮らしの方は「申し訳ない」「自分で何とかできる」で無理してしまうことが多い
当事務所でも一人暮らしの方へのご相談は、お受けしていますが、家族が同居している方に比べると、「ご自身からの相談が少ない」傾向にあります。
今まですべてご自身でこなしてきたので、頼ることが申し訳ないという気持ちや自分で何とかできるはずと思い、一人で抱えてしまうことが多いため、周りからの声かけによるきっかけが多いのだなと感じています。
(今まであったケース)
・友人が代理で相談
・職場の仲間が紹介し入院中の病室で相談
・在宅医や担当の訪問看護師からの紹介によりご自宅で相談
今回ご紹介する一人暮らしの方のお金の管理についてのご相談は、ご友人による「今後大丈夫かな?」がきっかけで始まりました。
「遠方に住む家族には迷惑をかけたくない」一人暮らしを選択
40代女性、大腸がん、肝転移、腸閉塞にて入院中。退院後はしばらく在宅療養の予定。
働けない期間や今後のことを考え、お金の面で不安があるということで、友人から代理で相談依頼があり、病室でご本人と面会しました。
ご本人には友人から今後の安心のために一度FP(私)と話してみたらどうかと説明をされていました。
ご本人からは、
●今後は家でゆっくりと過ごしたい
●事業で抱えた負債があり返済が滞っている
●遠方に住む家族には迷惑をかけたくないので、お金の面は自分で整理したい
●今後の治療費や生活費といったお金が足りるのか心配
●色々してくれる友達にもお礼がしたい
という思いをお聞きしました。
【一緒に考えていったこと】
✅住み続けながら自宅や貯蓄額から負債を支払う方法
✅残った資金での在宅ケアにかかるお金と今後の生活費
✅友人への心づけ
✅手続き関係はご自身でできる範囲、友人に頼める範囲を整理し、共有
心配事が無くなり、自宅でできる仕事を少しずつ行えているなど、喜ばれています。
ご自身では難しいことも、周りのちょっとした気づきがきっかけで、良い方向に向かうこともあるということをこのケースで分かっていただけたかと思います。
身近に友人や知人がいない場合は?
一人暮らしの方が、がん治療を継続しながら、今までの生活スタイルを大切にしていくために、これから考えていくと良いことを中心に解説しました。
一人暮らしの方は確かに治療や生活、お金、仕事など一人で決めなくてはならないことが多く、同居の家族がいる方に比べて手続き関係が大変です。
しかし
一人暮らしを続けていくことは決して不可能ではありません。
確かに血縁関係や戸籍上の関係が無いと、契約関係や制度の手続きは難しいケースもあります。
しかしそれ以上にいてくれることの心の支えは大きいのです。
同居している家族がいたとしても、家族関係が希薄な場合もありますので、血縁・戸籍上関係なく周りに信頼できる方がいるかどうかというのは、がん治療を行っていくうえでも、とても重要だと実感しています。
気になる、家族でないと難しい手続き関係に関しては、その時に対処法を考えていくことも可能です。
しかし、身近にそういった友人知人がいない場合もありますよね。
そういう場合は病院のがん相談支援センターで医療ソーシャルワーカーに相談してみましょう。
親身になって一緒に考えてくれますよ。
FPもこれからのお金の管理のことを一緒に考えることが可能なので、強い味方になるでしょう。(→「がん患者がFPに相談すると何が変わるのか」)
大切なのは、
一人暮らしのあなたが
一人で抱え込まないことです。
私、黒田は10年間の看護師経験を持ちながら、「高額療養費では解決できない、がん治療中のお金の悩み」が多くの患者さんにとって大きな負担であることを痛感してきました。FPのお金の知識を活用し、一人でも多くの方に安心した生活を提供したいという思いで、日々活動しています。
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筆者プロフィール
-
10年間の看護師経験を活かしたFPとして、がん患者さん、ご家族専門に年間およそ180件の家計相談を行っています。
治療費捻出だけでなく、安心して治療が行えるための生活費や教育費、住居費の悩み解決を得意としています。
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