がんの緩和ケアはいつから?

がん患者さん、ご家族の家計相談をお受けしていると、「緩和ケア」というキーワードはよく出てきます。

「緩和ケア」という言葉に、みなさんはどのようなイメージを持っているでしょう?
「がん治療ができなくなった方への医療」「がんの終末期に受ける」「余命告知されたら」と思っている方は実に多いですね。今回は質問の多いこの3つの内容についてがん患者さん専門の看護師FPがご説明します。

がんの緩和ケアはいつから?

まずはこちらの図をご覧ください。

私が看護師になった当初は(とは言ってもまだ十数年前ですが)まだ上の考えの医療従事者が多くいました。その頃は、緩和ケアではなく、「ターミナルケア」と呼ばれていました。
患者さんへの説明も、「積極的な治療が困難になってきたので、そろそろ…」といった感じでした。

まだわずかに上の考えの医療従事者はいますが、現在はほぼ下の図のような『がんと診断された時から始まるもの』という意識に変わってきています。

緩和ケアは終末期だけではないということです。

緩和ケアの対象は身体だけではありません

緩和ケアというと、多くの方が思い描く身体のケアだけではありません。

緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、的確なアセスメントと対処(治療・処置)を行うことによって、苦しみを予防し、和らげることで、クオリティー・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を改善するアプローチである。

引用:WHO(世界保健機関)による緩和ケアの定義(2002年)

と定義されています。こちらは具体的なケアの内容をまとめた図です。

具体例を挙げますと、

身体のつらさ:がんそのものの痛みや治療の副作用などのケア(痛み止めで痛みのコントロールをしながら抗がん剤の治療を行うなど)

心のつらさ:がん告知、余命告知などで生じる不安などの心理面のケア(精神面で不安定ですと、身体の辛さも感じやすくなると言われています。)

社会面のつらさ:病状や治療をきっかけに生じる社会的な立場の変化(夫、父親、営業職課長としての自分)のケア

スピリチュアルペイン:人生観、宗教、治療を行う意味を問うなどといった悩みのケア

がん治療の進歩に伴い、がんは必ずしも亡くなる疾患ではなく、がんと共存し社会生活を送る方が増えているので、緩和ケアの内容も少しずつ変わってきているように感じます。

看護師FPの考える今後の緩和ケアとは

がん治療の進歩に伴う生活環境の変化により、社会面の緩和ケアの重要性が高まってきていると考えます。治療中~後の皆さんが実際に悩んでいるのはこんな内容です。

(患者さんの実際の悩み)

  • 副作用で身体はつらいけど、治療費や生活維持のために働かざるを得ない
  • 治療費や住宅ローン返済で家計は圧迫している。子どもが大学進学希望しているが、正直厳しい。
  • 定年後嘱託にて勤務していたが、がんになり契約打ち切りになった。年金受給までの期間の収入や治療費捻出をどうするか
  • がんになった後も加入できる医療保険は入った方が良いのか、今後の治療費が心配
  • 治療が終了していても、手術の合併症で時々治療を受けている。そのため団体信用保険加入が厳しく、住宅ローンが組みにくい
  • がんの後遺症で傷病手当金はもう終わってしまった。障害年金には該当しないけれど仕事は難しい。どうしたらよいか。

といった切実な内容が多いです。

これらはすべてがんによる社会面のつらさです。

治療期間だけでなく、その後の人生にも影響を及ぼし、悩んでいる方がいます。

公的な制度(健康保険や年金制度)だけでは解決できない内容であり、医療機関では相談対応していない、私的財産の悩みなのです。

社会面での困りごとは、身体と同じく早期対処できることで、選択肢も広がります。

医療機関だけでは対処の難しい私的財産の悩みについては、FPが連携していくことでより充実した包括的な緩和ケアにつながると考えています。

現在、がんの就労支援は全国的にも進んできていますが、経済面の悩みについても、近い将来気軽に相談できる世の中になって欲しいと考え、この活動を続けていきたいと思っています。

追記)緩和ケアについては、在宅緩和ケアの質問も増えています。

がん在宅緩和ケアを費用の面から考えるポイント」も合わせてお読みください。

 

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10年間の看護師経験を持ち、現在も3つのがん診療連携拠点病院での家計相談員を務める、がん患者さん専門のFP(ファイナンシャル・プランナー)

制度だけでは解決の難しい患者さん個人の家計の悩みのサポートに専念するため一念発起し、2016年に看護師からFPに転身。

これまで千葉を中心に、悩みを抱える全国のがん患者さん、ご家族約250人のお金の相談を担当。

著書:「がんになったら知っておきたいお金の話 看護師FPが授ける家計、制度、就労の知恵」(日経メディカル開発)
全国で講演やテレビのコメンテーターも行っている。

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