病院を退職し、がん患者専門の家計アドバイザーになった理由
「なぜ、看護師を辞めてまで、FPになったの?」
現在の仕事内容を説明するときにいつも聞かれます。一言では説明しにくいのですが、その時に答えている内容も含めてお伝えしたいと思います。2016年2月まで千葉市内の病院で看護師として勤務していました。病院を退職し現職に至った理由は、10年間の看護師経験の中で感じた「もどかしさ」です。
- 独居の末期がん患者で身体のつらさは取れていたが、身寄りがいないため最期まで自宅に帰れず。相続する人もいない、帰らない家という資産はあっても現金が少ない。限られた人生をベッドの上で過ごす。
- 若い男性末期がん患者で、妻は夫の亡くなった後の生活(お金)の不安が大きく、残された時間を夫に寄り添えない。
- いつまでかかるか分からないがん治療、月々数万かかる治療費に加え、住宅ローンや教育費といった支出がかかる一方で、働けず収入減。家族に迷惑をかけてまで治療を継続する意味はあるのか。
一番上のケースは、この道に進もうと思ったきっかけでもあり、とても思い入れがあります。毎日患者さんと顔を合わせるけれど、本当にこれで良いのか、しかし看護師としてはどこまで介入すべきなのか。知識がないため、解決策がわからず自問自答の毎日でした。残された時間をどのように過ごしたいのかという問題は看護師としてだけでなく、一人の人間として考えさせられました。
医療機関では制度の個別具体性のある内容や、個人資産に関する介入はしていません。看護師の仕事にはやりがいも感じていましたが、上記のようながん治療特有の切実な生活上の悩みを解決する人が必要だと思いました。そこでお金の資格ファイナンシャルプランナーの勉強をし、昨年全国で初めての看護師経験を持つFPによる、がん患者専門の家計相談事務所を開業しました。
時間を戻すことはできませんが、上記のような状況で悩んでいる患者さんやご家族のために治療を行う生活上の悩みに対応できることで、あの時の患者さん達にも恩返ししていけたらと思っています。
看護師の働く場所は病院だけではありません。訪問看護や企業、行政、そして私のように看護師の経験を活かして起業されている方もたくさんいます。様々な場面で病気を抱えながら生活する方のサポートをするという意味では看護師の多様性も今後はもっと増えていくと思います。病院は辞めましたが、看護師は辞めていません。患者さんやご家族と接する際に気をつけていることについては、がん患者の相談にFPが介入する理由をご覧ください。
FPというと、まだまだ保険販売をする人というイメージが強いため、最近は分かりやすく「がん患者専門の家計アドバイザー」と説明していることも多いです。
このような感じで、仕事の内容の説明にはいつも時間を要しています。
4月9日の千葉市長との公開トークセッションでは、ここまで自分のことは話しませんが、がん患者さんや家族に起きている現状について市長と千葉市の皆さんと共有できたらと思っています。
筆者プロフィール
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10年間の看護師経験を活かしたFPとして、がん患者さん、ご家族専門に年間およそ180件の家計相談を行っています。
治療費捻出だけでなく、安心して治療が行えるための生活費や教育費、住居費の悩み解決を得意としています。
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書籍:「がんになったら知っておきたいお金の話 看護師FPが授ける家計、制度、就労の知恵」(日経メディカル開発)
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