がん患者の医療費控除で失敗しない2つの精算ポイント
がん患者さんのお金の専門家、看護師FP®の黒田です。
年末年始は医療費控除の質問が多くなる時期ですが、医療費控除は一度に行おうとすると大変です。
しかも、補てんされた金額はきちんと精算したうえで医療費控除を行わないと、後々大変なことになることも。
今回は年内に整理しておくと年明け後の医療費控除の申告が格段に楽になるポイントを2つお伝えしますので、時間のある時に少しづつまとめていきましょう。
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「補てんされる金額」ってなに?
医療費控除の計算式では、「(実際に支払った医療費の合計額 - 保険金などで補てんされる金額) -10万円※ = 控除額」※その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額
と書かれていますが、そもそも「補てんされる金額」ってどのようなものかご存じですか?
国税庁の確定申告書等作成コーナーでは、「生命保険契約などで支給される入院費給付金や健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金など」と記載されていますが、一見想像がつきにくい高額療養費もあり、確定申告の時期になり医療費を見直さなければいけない患者さんが多くいます。
そして、がん保険や医療保険の給付金も、「急いで給付を受けなくても」と思われていても、確定申告の時期になり「もっと早く請求しておけば良かった」という方もいます。
このように確定申告の時期にバタバタしなくても良いよう、補てんされる金額の「高額療養費」と「がん保険・医療保険の給付金の請求」のポイントを押さえておきましょう。
ポイント①世帯合算の抜けが無いかチェック
入院と外来を合算
入院と外来が同じ月にかかっている場合、限度額適用認定証の窓口提示によりそれぞれ自己負担額の上限までとなりますが、区分「ウ」(一般的な収入の方)の場合、8万円台(多数回該当でも5万円弱)が両方では大変ですよね。
入院・外来が両方とも21,000円以上であれば合算することが可能なので、区分「ウ」の方であれば入院・外来合わせて8万円台とすることが可能です。
入院・外来でなくても他の医療機関にかかった場合や家族で同じ健康保険の場合は同様に合算が可能です。
さらにもう一つ、外来診察料とその診察で処方された調剤薬局(院外処方)も合算が可能です。
外来と調剤薬局を合算
通院治療で抗がん剤の点滴、そして調剤薬局でも飲み薬を処方を受けているという方は要チェックです。
抗がん剤やホルモン剤、副作用対策の薬など処方されている方も多いかと思います。
厚生労働省保険局の「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(画像)の下部「注 1つの医療機関等での自己負担(院外処方代を含みます。)」との記載の通り、一つの薬局で同一月に同一の医療機関から発行された処方箋で調剤された費用についてのみ合算して適用されるというしくみがあります。
外来診察料と調剤薬局の処方代が合算できるということはまだあまり知られておらず、相談者の中にも合算手続きをされていない方も多くいらっしゃいます。
3ヶ月ほどかかりますが、自動で合算をしてくれる健康保険組合もあります。しかし加入の公的医療保険によってはご自身で手続きをしないと合算できない場合もあり、対応は様々です。健康保険証に書かれている加入先の公的医療保険に手続きの必要を確認しましょう。
健康保険組合によっては、月をまたいだ調剤分について合算できなくなるなど例外もあるため、注意が必要です。
医療費控除は引かれた所得税(源泉徴収票の「源泉徴収税額」)のうちの所得税率分しか戻ってきません。(例:給与所得500万円の方は20%)
対して高額療養費の世帯合算は医療費が超えた分がそのまま戻ってくることからも、金額が大きいことがご理解いただけるかと思います。
ポイント②がん保険・医療保険の給付金での清算
国税庁の確定申告コーナーではこのように、後々修正しても良いと書かれていますが、正直二度手間です。
年末年始に入院が渡っているなどの理由が無ければ、年内にがん保険や医療保険の給付金は請求し、かかった医療費と相殺しておくことをお勧めします。
保険金などで補てんされる金額が確定申告書を提出するときまでに確定していない場合には、その補てんされる金額の見込額を支払った医療費から差し引きます。
確定申告書等作成コーナーよくある質問
後日、補てんされる金額を受け取ったときに、その額が見込額と異なる場合には、修正申告(見込額より受領額の方が多い場合)又は更正の請求(見込額より受領額の方が少ない場合)の手続により訂正することとなります。
医療費の精算はしていないと後々大変
ポイント①は年内に医療費を整理しておくことで医療費控除を楽にするのですが、ポイント②については、実はしておかないと後々大変なのです。
というのも、医療費控除というのは税金の還付を行う行為ですので、きちんと医療費を整理してから申告しないと、虚偽申告となってしまう可能性があるためです。
税務調査前に自ら修正申告をすれば過少申告加算税は発生しませんが、期間に応じた延滞税が発生します。
医療費控除を行う確定申告の結果というのは、市区町村に連携されますので、住民税にも影響してしまいます。
「医療費控除だけだったら税務署の調査もそうそう来ないし大丈夫でしょう」と思われがちですが、私は実際に調査が入った方を見ているので、絶対にないとは言い切れません。
補足)年内に退職した方は確定申告の準備を
年内に再就職して年末調整を受けている場合は良いのですが、再就職をしていない場合は、所得税及び復興特別所得税が納め過ぎている場合がありますので、退職した翌年の確定申告を行いましょう。
医療費控除の準備は年内にしておくと楽です
高額療養費の時効は2年ですので、2年前までの医療費に関しては上記の方法で精算が可能ですが、医療費控除を既に行っている場合は確定申告の修正申告も忘れずに行いましょう。
医療費を適切な方法で取り戻す方法を今回はお伝えしましたが、それでも全額返ってくるわけではありません。今回、気になったという方は、もしかすると他にも適切に制度やお金のしくみを活用しきれていなく、もったいないお金の状況の可能性があります。
時効があったり、後戻りができないこともあるため、制度やお金は「気になった時が最適のタイミング」です。
「今、使える制度は取りこぼしていないかな?」「他の支出を見直したら医療費にまわせるのかな?」と思う方は、個別相談をご活用いただくのをお勧めします。
あなたの情報を基にした制度やお金の方法をすぐに手に入れることができます。
ご相談では医療費控除のレクチャーも行っています。
私、黒田は10年間の看護師の経験から痛感した「高額療養費では解決できない、がん治療中のお金の悩み」に対し、FPのお金の知識を活用して、一人でも多くの方に安心した治療生活を送っていただきたい、そんな思いで日々取り組んでいます。
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筆者プロフィール
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10年間の看護師経験を活かしたFPとして、がん患者さん、ご家族専門に年間およそ180件の家計相談を行っています。
治療費捻出だけでなく、安心して治療が行えるための生活費や教育費、住居費の悩み解決を得意としています。
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