がん患者のNISA、ここに注意!

2024年より新NISAが始まることもあり、ここ最近のご相談でも「NISA始めた方がよいでしょうか?」という質問が増えています。

がん治療中であってもNISAやiDeCoなどを開始する、継続することも可能な方もいれば、始めるタイミングを検討した方が良い方もいます。

一人ひとり状況が異なりますので、ヒントにしていただければと思います。

今回はNISAの基本的な内容というよりは、がん患者さんにとっての注意点をメインにご説明します。

この内容は動画からでもご覧になれます

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がん患者がNISAを始めたい理由

通帳と電卓

当事務所では、様々ながん患者さんやご家族から相談を受けています。これから治療の方も、治療真っ最中の方も、経過観察中の方もいます。

今までの相談者の意見としては、「今後の治療費の足しにしたい」が一番多いです。

次いで「将来が不安だから増やしたい」という意見です。

NISAはiDeCo(個人型確定拠出年金)と違って、いつでも払い出しが可能ですし、こういったご希望通りに確実に増やせるのであれば私も皆さんにお勧めしたいと思います。

では、なぜお勧めできる人とお勧めできない方に分かれるのでしょうか。

つみたてNISAの概要と注意点からわかることもありますので、簡単ではありますが概要をご説明します。

つみたてNISAとは(現在のNISA)

主な特徴

  1. 少額から始められる(金融機関により異なる)
  2. 投資信託の運用益が非課税
  3. 長期投資・分散投資することで元本割れのリスクを減らせる

といった特徴があります。詳細は金融庁の「つみたてNISA早わかりガイドブック」をご覧ください。

一般的な資産運用に比べ、口座を開設すれば手軽に始められそうというイメージや、来年から始まる新NISAの特集などでがん患者さん、ご家族も目にすることが多く後押しされているという状況です。

しかし、がん患者さんは注意していかなくてはいけない点もありますので、きちんとここを確認してから検討されることをお勧めします。

がん患者さんにとっての最大の注意点

がん治療の特徴ともいえるのですが、いつ、どのタイミングで治療が再開するのか、継続するのかが不明確であることです。

治療費だけではなく、治療による影響で働き方も変わる可能性があります。

(そんなことを言ったら、健康な方もいつ大きな病気になるのかわからないでしょ?と思われるかもしれませんが)

NISAのメリットは運用益が非課税であることです。

しかし、運用というのは増える可能性もあれば、減る可能性もあります。

治療が始まるので払い出ししたいと思った時に、投資信託の価格が下がっていたとしても大丈夫なのであれば良いかと思います。

リスクの許容度とも言いますが、これは資金面や生活面の状況が反映される大きな部分です。がん患者さんは特にこのあたりは考えた方が良いでしょう。

そして、払い出しの際にマイナス(損失)となった場合でも、損益通算(そんえきつうさん 利益と損失を合算し、申告する利益を少なくできる制度)ができないといった点も注意です。

資産運用の基本的な考え方

NISAも資産運用ですので、基本的にはこのような図の考え方になります。

  1. 生活資金:日常の生活費・治療費に使うお金
  2. 使用予定資金:子どもの教育費など今後10年以内に使う予定があるお金
  3. 余裕資金:10年以内に使う予定がないお金
  4. 緊急資金:急な出費に備えるためのお金(がん患者さんの場合、傷病手当金が利用できる方は①の6ヶ月分、利用でき無い方は1年分)
    再発に備えた医療用貯蓄などもここに入る

日本FP協会の暮らしとお金のワークブックを参考にがん患者さんバージョンで作成したものです。
安全に家計を維持しながら資産運用に充てて良いのは③と言われている内容は、医療費がかかる可能性があるがん患者さんにとっても同様の考え方で良いでしょう。

ここをまず整理し、「毎月いくらかけたい」ではなく、「毎月いくらなら無理なく積立可能か」を考えていくことが、治療予定の不明確ながん患者さんやご家族には大事な視点となってきます。

ですので、NISAを始めるタイミングとしては、まずは治療が一旦落ち着き、働き方も安定して①~④の整理ができてからの方が、安心して続けられるのではないかとご相談の際にはお伝えしています。

ご相談では①~④の整理が難しいとおっしゃる方が多いので、一緒に整理するところから行っています。

このような場合、つみたてNISAはどう考える?

今までお受けした質問に対しての返答例です。資産状況や今後の治療予定にもよりますので、必ずしもというわけではありません。
ご自身の状況を考えるにあたり、参考にしてみてください。

月々は足りないけれど、カード払いにすればつみたてNISAができる

現状マイナス家計をカード払いで後延ばしにしているに過ぎないので、家計の中から前述の③が捻出できない状況ではお勧めできません。

貯蓄を切り崩してでもつみたてNISAをしておきたい

基本的には貯蓄からNISAへの資産の移し替えにすぎませんので、資産状況や今後の収入の状況(治療予定による)を見ながら検討していくのが良いかと思われます。

傷病手当金から行っても良いか

収入をどのように使うのかはご本人次第ではありますが、休職中によくあることとして、復職の際に傷病手当金の金額まで働くことが大変という声をよくお聞きします。治療の予定がはっきりしてから、または復職して今まで通りの収入に戻ってから始めても良いのではと伝えることが多いです。

新NISAも始まるけれど、大事なのは自分軸

2024年からは新NISAとなり、金額も拡大します。国も資産運用を押していることが分かりますが、大事なのは自分軸です。

今も不安だけど将来も不安だから何かしておきたいと思うのは、当たり前のことです。

しかし、将来のお金というのは、今の積み重ねです。

特に現在がん治療中の方に関しては、将来の長期の前に、まずは今のお金の不安を取り除き、治療~治療終了後の収入が復活できるまでの短期のスパンを考えていくことが将来の安定につながります。

現在のお金の状況を①~④を整理するところからはじめてみましょう。

一人ひとり、治療方針も資産状況も家族構成も、働く環境も家計状況も違いますので、「自分にとってはどうなのか」の視点で考えられると安心して治療や資産形成ができますね。

私、黒田は10年間の看護師の経験から痛感した「高額療養費では解決できない、がん治療中のお金の悩み」に対し、FPのお金の知識を活用して、一人でも多くの方に安心した治療生活を送っていただきたい、そんな思いで日々取り組んでいます。

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筆者プロフィール

黒田 ちはる
黒田 ちはるがん患者さんのお金の専門家 看護師FP®
10年間の看護師経験を活かしたFPとして、がん患者さん、ご家族専門に年間およそ180件の家計相談を行っています。
治療費捻出だけでなく、安心して治療が行えるための生活費や教育費、住居費の悩み解決を得意としています。
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