高額療養費制度の年間上限とは?がん患者さんが知っておきたい3つの注意点
2026年8月から始まる高額療養費制度の見直しでは、新たに「年間上限」が導入されます。
「年間上限ができるなら、医療費の心配は少なくなるのでは?」
そのように感じている方も多いかもしれません。
年間上限は、長期間治療を続ける方にとって大きな助けとなります。
ただし、内容を正しく理解していないと、「思っていたのと違った」となってしまいます。
この記事では、
✅年間上限の仕組み
✅注意しておきたいポイント
✅医療費だけではなく収入も含めて考える理由
について分かりやすく解説します。

高額療養費の見直しに関する記事、三部作です。
①高額療養費制度の見直し後も変わらず大切な2つのポイント
②高額療養費制度見直し|結局、負担は増える?減る?4つのケースで解説
③高額療養費制度の年間上限とは?がん患者さんが知っておきたい注意点(今回)
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年間上限とは?
2026年8月から、高額療養費制度には新たに年間上限が設けられます。
これは、1年間に支払った自己負担額が一定額を超えた場合に適用されます。
長期にわたり治療を続ける患者さんにとっては、医療費負担を軽減するための新しい制度といえます。
ただし、注意点があります。現時点で分かっている3つの注意点をお伝えしますので、参考にしてください。
① 一度は自分で支払う必要がある
年間上限は、窓口で自動的に適用される制度ではありません。

現在予定されているしくみでは、
- 医療費を支払う
- 年間(8月~翌年7月)の自己負担額を確認
- 上限を超えていた場合に払い戻しを受ける
という流れになります。
つまり、年間上限を超えた分も、一時的には自分で立て替えて支払う必要があります。
つまり、年間上限に達したからといって、自動的に支払いが止まるわけでは無いのでご注意ください。
年間上限のスケジュールは8月~翌7月になります。
現在の70歳以上の外来特例のスケジュールに準じているということですね。
恐らく加入の健康保険から通知が届くと思いますが、届かない場合にはご自身で気づいて申請しないと戻ってきません。
8月に申請したとして、払い戻しにどのくらい時間がかかるのかによっても医療費や生活費の予算立てを考えておかなくてはなりません。
FPとしては、確定申告に間に合うことを願っています。
通常、医療費控除だけの場合は還付申告なので、確定申告の時期に必ずというわけではありません。5年間は遡って申告が可能です。
ただし、個人事業主など確定申告時期に必ず行わなければならない方にとっては、期間内に医療費控除をどこの金額まで入れていくのか情報整理していくことになります。
がん保険・医療保険の給付金をどうやって補てんの金額として年間上限と照らし合わせるのかなど、課題はたくさんあります。
② マイナ保険証だけでは完結しない
「とはいっても、今はマイナ保険証でできるでしょ?」と思われるかもしれません。
高額療養費制度では、マイナ保険証により窓口で自己負担限度額まで負担を減らせます。
しかし、年間上限では現時点でそのような自動的なしくみではありません。
加入している健康保険から案内が届いたり、ご自身で申請したりして払い戻しを受ける「償還払い」(払い戻し)となります。
制度を知らないまま申請を忘れてしまうと、本来受けられる払い戻しを受けられなくなる可能性もありますので、注意しましょう。
このマイナ保険証では自動的に行えないしくみとして、69歳以下の方の「世帯合算」も含まれます。
こちらの記事も合わせてご覧ください。
③ 医療費だけではなく収入も考えることが大事
年間上限が導入されることで、医療費への注目が集まっています。
ただ、実際の家計では医療費だけを見ていても不安の解決に十分とはいえません。
患者家計サポート協会が実施した実態調査では、約6割の方が治療開始後に収入が減少したと回答しています。

その理由は、
・休職
・退職
・勤務時間の短縮
・残業の減少
などさまざまです。
仕事を続けていても収入が減るケースは少なくありません。
さらに、ボーナスの査定期間に治療や休職が重なることで、ボーナスが減額されたり支給されなかったりするケースもあります。
年間上限があるから安心、ではなく、
医療費と収入を合わせて考えることが大事になります。
これからの家計は「年間」で考えることが重要
患者さんのご相談では、毎月の医療費だけではなく、
- 傷病手当金はいつ入るのか
- 医療費はいつ多くかかるのか
- ボーナスへの影響はあるのか
- 固定資産税や教育費など大きな支払いはいつなのか
など、1年間のお金の流れを一緒に整理しています。
例えば休職した場合、
傷病手当金は申請後に支給されるため、最初の数か月は収入が少ない状態が続くことがあります。
その間も、
- 医療費
- 生活費
- 社会保険料
- 住宅ローン
- 教育費
などの支払いは続きます。
だからこそ、
「お金がなくなってから考える」のではなく、
「今あるうちに見通しを立てる」
ことが大切です。
利用できる制度やお金の情報は組み合わせて考える
患者さんが利用できる資源は一つではありません。
例えば、
✅高額療養費制度
✅傷病手当金
✅障害年金
✅治療と仕事の両立支援
✅家計管理
✅貯蓄や保険
それぞれを組み合わせながら考えていくことで、治療を続けながら生活を維持しやすくなります。

このように、土台からしっかりと整えていくことが大事で、どれか一つだけではなく、全体を見ながら考えていきましょう。
「自分の場合はどうなのか」を確認することが大切
高額療養費制度は、医療費の負担を軽減する大切な制度です。
ただ、がん治療では医療費だけではありません。

治療内容や医療費だけでなく、年齢や収入、加入している健康保険、働き方などによっても変わってきます。
そのため、「自分の場合はどうなのか」を確認することがとても大切です。
収入の減少、教育費、住宅ローン、生活費なども含めて考える必要があります。
「制度は分かったけれど、自分の場合はどうなるのだろう。」
そのような時は、一人で悩まず相談してください。
一番身近なのは、病院のがん相談支援センターです。
私が代表を務める患者家計サポート協会でも無料相談をオンラインで定期開催しています。

患者家計サポート協会では、制度だけではなく、働き方や家計も含めて一緒に考える無料相談を行っています。
また、継続的なサポートをご希望の方には、年間の家計シミュレーションを作成しながら見通しを立てる個別相談も行っています。
制度を知ることは第一歩です。
制度をご自身の生活の中でどのように活用するかを考えることが、安心して治療を続けることにつながります。
継続的なサポートをご希望の方は、看護師FP黒田ちはるの個別相談も行っています。
年間の医療費や生活費をシミュレーションしながら、今後の見通しを一緒に考えていきます。
私、黒田は10年間の看護師経験を持ちながら、「高額療養費では解決できない、がん治療中のお金の悩み」が多くの患者さんにとって大きな負担であることを痛感してきました。FPのお金の知識を活用し、一人でも多くの方に安心した生活を提供したいという思いで、日々活動しています。
一緒にお金の悩みを解決しませんか?
家計相談のご案内
治療費の不安を解消したい方に向けて、マンツーマンで行うオーダーメイド家計相談を行っています。
- 完全予約制で毎月新規の受付は3名限定です
- 継続相談が多いため、早めのご予約をおすすめします。
- 今月の枠が埋まっている場合でも、来月のご案内を優先的にさせていただきます。
筆者プロフィール

- がん患者さんのお金の専門家 看護師FP®
-
10年間の看護師経験を活かしたFPとして、がん患者さん、ご家族専門に年間およそ180件の家計相談を行っています。
治療費捻出だけでなく、安心して治療が行えるための生活費や教育費、住居費の悩み解決を得意としています。
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近著:【図解】医療費・仕事・公的支援の悩みが解決する がんとお金の話 (彩図社)
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