がん患者がお金を守るために必要な知識

がん患者さんのお金の専門家 看護師FPの黒田です。

私がお受けしている相談で多い悩みとしては、「抗がん剤の治療費をどうやって工面していけば良いか」「治療を続けながら住宅ローンや教育費、カードローンをどうやって支払っていけば良いか」があります。

家計相談の際には、まず今までの治療の経緯やお金の状況をお聞きします。

そうすると、今後のがん治療に対しての悩みや代替医療に関しての悩みも聞かれます。

300名の相談を基に作成した、治療費の捻出法や治療継続しながらのカードローン返済法のノウハウが58ページにギュッと詰まった1冊です。8/20~リニューアル!

がんは毎年新しい治療法が認可されており、治療技術・検査の技術も向上しています。

そのため、他の疾患に比べ「本当にこの治療法で良いのか」「どうやって選択していったら良いのか」「この最新の治療だったら私にも効くはず」と悩んでいるケースも少なくはありません。

私自身は、最終的には治療法や代替療法の選択というのは、ご本人が決定されることで、誰も否定すべきではないという考えです。

ましてやFPは治療法や治療場所に関しては専門外ですので、言及することはご法度だと考えています。

しかし、色々な謳い文句に乗せられ、結果的に体も金銭的にも思わしくない結果となった方々を見てきている経験から、科学的に実証されていない様々な治療というのは、「良い面」だけでなく、「悪い面(起こる可能性がある)」という情報発信はしていく必要があると考え、今回はあえて「あやしい治療法にだまされないための方法」について解説します。

今日お伝えする、「あやしい治療法」の定義は、治療法、食事法、サプリメントなど、科学的な根拠がまだ証明されていないものとします。

これからお伝えする内容は、先日FP研修を担当した際にご紹介した「FPが知っておきたいがんの知識」でご紹介した書籍「世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった 最高のがん治療」(ダイヤモンド社)から引用し、私の経験や見解を述べたものです。

もっと詳しく知りたいという方は、書籍を読まれることをお勧めします。

がん患者があやしい治療にだまされる背景

教育レベルと収入が高い人ほど、あやしいがん治療にだまされています。

「世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった 最高のがん治療」(ダイヤモンド社)より引用

教育レベルや収入の高い人は、そうでない人に比べると、色々な情報が手に入りやすい傾向にあります。

調べる能力もあるので、「ここまで調べたし、自分は大丈夫だろう」と思うこともあるかと考えられます。

しかし、調べる能力があるのと、専門的ながんの知識で判断できることは違います。

今はインターネットがあればある程度のことが調べられます。

情報格差がこういったところにも出ているなと感じています。

ただし、インターネットの怖いところは、上位に検索されるから、拡散しているからで判断されがちだという点です。
情報過多と言われる時代です。

手に入れた情報に関しては、「大丈夫だろう」ではなく、医学的な根拠で裏付けしてから判断することが必要です。
がんの専門医に確認されることをお勧めします。

お金の面ですが、貯蓄や生命保険・がん保険の給付金を使っている方が多いです。
では、そういった蓄えが無い方は行っていないのかというと、そうではありません。

必要性を感じれば借金をしてでも行っている方もいました。

このことから、お金ももちろんですが、人付き合いや情報の判断(教育レベルもここに関係)が重要なのではと私は考えています。

私が考える一番は、信頼関係です。

主治医との信頼関係が築けているのかどうか。

「標準治療としてはもう治療法が無いので、緩和ケアを受けてください」と突き放された患者さんもいました。

(緩和ケアに関しては「緩和ケアはいつから?」をお読みください)

もしもこれからのことを一緒に考えてくれる医師だったら、あやしい治療についても一緒に考えてくれていたかもしれません。

しかし、このあたりは医師もどうにかしてコミュニケーションを取ろうとしているケースもあるため、一概には言えないことです。

主治医の次に多いのが、親戚関係や親しい友人です。

信頼している方が、心配して良かれと思ってサプリメントや食事療法などを勧めてくるケースが多いのです。

患者さんは「せっかくだし、断りづらいし、やってみよう」という気持ちで始めたとしても、数十万、数百万円する治療法を一旦始めたらやめるにやめられず、継続するためにお金の悩みを抱えている方もいます。

ここで私の看護師時代の経験を2つご紹介します。

・知り合いからがんに効くと勧められた、中国のサプリメントを服用していたけれど、結果的に肝機能、腎機能が悪くなり、抗がん剤治療が行えなくなった(抗がん剤治療は全身状態が良好でないと行えません)

・クリニックでどんながんでも効くという免疫療法を行った結果、皮膚の湿疹や気分が悪くなるという症状が出た。クリニックでは副作用に関しては診ることはできないと言われ、元々かかっていた総合病院に救急搬送された

あやしい治療というのは、一見魔法のような紹介をされているため、藁にもすがる方にとっては良く見えてしまいます。

しかし少し違う見方も必要で、総合的に自分にとって行うべきなのかを考えるきっかけにしていただきたいと思い、ここからは「あやしいがん治療にだまされないための方法」をご紹介します。

あやしいがん治療にだまされないためのポイント

書籍「世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった 最高のがん治療」(ダイヤモンド社)の173ページから記載されている、見分けるポイントをご紹介しながら私の見解を述べていきます。

もっと詳しく学びたいという方は書籍をご覧ください。

 健康保険が効かない

②「どのがんにも効く」という文言

③「免疫力アップ」

④ 経験談や少数の治療実績

⑤ 細胞実験レベル

⑥「がん予防に効くからがん治療にも効く」

「世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった 最高のがん治療」(ダイヤモンド社)より引用

① 健康保険が効かない

標準治療(健康保険が適用)と自費診療のしくみから言えることです。

高額だから効くのではと思われている方も多いと思いますが、実は標準治療も高いのです。

しかし国が有効性を認めている治療だからこそ国が費用を補ってでも皆さんに受けてもらいたい治療なので、健康保険が適用となり、皆さんは1~3割負担であったり、高額療養費での自己負担で済んでいます。
(がんの治療での話なので、他の疾患は違います)

②「どのがんにも効く」という文言

この部分で特に印象に残っているのが、

「がんと一言で言いますが、本来は数千の別の病気の集まりです。」

「世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった 最高のがん治療」(ダイヤモンド社)より引用

本当にこれは実感しています。

効く薬も乳がんでさえ、タイプ別に異なりますし、放射線療法だって効きやすいがんと聞きにくいがんがあります。

血液がんと固形がんでは治療内容は全く違います。

そんな魔法のどんながんにでも効く治療法があれば、①のようにもう既に標準治療になっているはずなのではと考えてしまいます。

③「免疫力アップ」

免疫チェックポイント療法が出てきてからは、さらに聞くようになりました。

免疫チェックポイント療法以外の免疫療法での謳い文句としてもよく聞きますね。

しかし、科学的根拠がないものばかりというのが実情です。

④「経験談や少数の治療実績」⑤「細胞実験レベル」

④「経験談や少数の治療実績」は、私たちが日ごろから気を付けておくべき内容だと思っています。

⑤「細胞実験レベル」にもつながるのですが、約1万個の治療薬の中から研究や臨床試験を通り抜けて標準治療になるのはたった一つです。

臨床試験では何千人もの方が参加して集められたデータです。

一方で個別の例を強調し、「余命2年が5年も生きた奇跡の治療法!」というのは、本当にその方がその治療の結果生存できたのか、それとも余命の中央値を大きく超えた患者さんだったためなのかはわからないのです。

がんに関しては多くの経験談があります。
貴重な経験ではありますが、一つだけを参考にしてしまうのはこういった理由もあり危険だと感じています。
これは治療法だけでなく、お金や制度の利用についてもいえることです。

ですので、経験談を参考にするときには「一つではなく、いくつかあるうちの一つ」として取り入れるようにすると良いでしょう。そこに科学的根拠があるのかを確認することが大切です。

経験談は影響力があるからこそ、伝える方も聞く方も注意していきたいものです。

⑥「がん予防に効くからがん治療にも効く」

予防と治療は全く別物です

食事療法に多いですね。

書籍の中では、がんの予防を「青少年が不良やギャングにならないよう、更生させること」、がん治療は「他人に悪行の限りを尽くしているギャングを壊滅させること」と表しています。

私は研修で「不良とヤクザ」という表現を使ってしまいましたが、後程参加者から分かりやすかったと感想をいただけたので、きっと意味合いは伝わったのではないかと思います。

つまり、予防と治療は全く別物です。

食事療法を取り入れるのならば、治療を行う体力・気力をキープできるような、あくまでも治療のサポート的な部分で取り入れると良いのかなと思っています。

まとめ

冒頭にもお伝えした通り、身体とお金は直結しており、患者さん自身の今日の選択が明日以降の身体や生活、そしてお金にも影響してきます。

生活やお金というのは、患者さん自身だけでなくご家族にも関係します。

患者さんが治療について医療従事者とじっくり話せること、そしてお金のことについては私たちのようなFPと話せることで、「こんなはずじゃなかった」は未然に防ぐことは可能です。

お金は有限です。

しかし、使い方や考え方によっては様々な可能性があります。

この内容が、皆さんの身体とお金を守り、より充実したこれからの家族との生活に活かしてもらえると嬉しいです。

筆者プロフィール

黒田 ちはる
黒田 ちはるがん患者さんのお金の専門家 看護師FP
千葉で10年間の看護師経験を活かしたFPとして、がん患者さん、ご家族専門の家計相談を行っています。2016年より全国から300名以上のご相談を担当してきました。
東京都、埼玉県内のがん診療連携拠点病院での家計相談員を務めています。

書籍:「がんになったら知っておきたいお金の話 看護師FPが授ける家計、制度、就労の知恵」(日経メディカル開発)