がんが再発したときに利用できる制度と治療費、生活費の悩み
がん再発後の生活に不安がある方向けの内容です。
初発の時よりも長い期間治療を行うと説明を受けていて、「どのくらい治療費がかかるのか」「生活は成り立つのか」「仕事は続けられるのか」といった不安はありませんか?
治療方針によっても変わりますが、今回はがん再発、転移の際に利用できる可能性のある制度と生活への不安の対処法についてがん患者さんのお金の専門家 看護師FP黒田がお伝えします。
がんの再発・転移とは?
がんの部位やタイプにより、再発や転移後の進行の速さには個人差があります。
「再発」とは、治療がうまくいったようにみえても、手術で取りきれていなかった目に見えない小さながんが残っていて再び現れたり、薬物療法(抗がん剤治療)や放射線治療でいったん縮小したがんが再び大きくなったり、別の場所に同じがんが出現することをいいます。
治療した場所の近くで再発を指摘されるだけでなく、別の場所に「転移」としてがんが見つかることも含めて再発といいます。「転移」とは、がん細胞が最初に発生した場所から、血管やリンパに入り込み、血液やリンパの流れに乗って別の臓器や器官に移動し、そこでふえることをいいます。
リンパの流れが集まる場所であるリンパ節に転移したり、肺や肝臓、脳、骨など血液の流れが豊富な場所に転移することが多いです。「播種」とは、がんのできた臓器からがん細胞がはがれ落ち、近接する体内の空間(胸腔や腹腔)に散らばるように広がることをいいます。
国立がん研究センターがん情報サービス「がんの再発や転移のことを知る」
これからの治療や、どのように過ごしていきたいのかについては、正解はありません。
あなたと周りの大切な人、そして医療スタッフと一緒に考えていくことで、あなたらしい生活を送ることが可能です。
そのなかで、利用できる制度やお金のやりくりはとても大切になってきます。
今までサポートに携わってきた中で患者さんが利用している3つの制度とお金のやりくりの方法をお伝えしますね。
制度1.傷病手当金の可能性
会社員、公務員の方が利用できる休職中の生活保障の傷病手当金です。
今まで利用していなかった方は、優先順位をつけて考えていきましょう。
なお、初発で利用した方でもう一度利用できるのか確認したい方、そして「傷病手当金ってどんな制度だっけ?」という方は、がん治療中に傷病手当金が支給されないケースと2回目も支給されたケースをご覧ください。
(すぐに傷病手当金を利用したほうが良い人)
- 現時点で体の不調のため、生活・仕事に支障を来している
- 他に利用できる有給休暇や病気休暇などがない(就業規則で確認)
- 有給休暇が残っていても、治療日、副作用が出る日、検査日を占める日数が多く、対応しきれない
(すぐに傷病手当金は利用しない方が良い人)
- 他の休暇制度が利用できそう
- 在宅ワークや時間差出勤などで対応できそう
- 今の治療では有給休暇で対応できそうだけど、今後副作用や体力低下が起こりそう
治療に関しては不確定な部分が多いかと思いますが、現段階で予想できる内容を主治医、看護師、薬剤師などに確認してみると良いでしょう。
制度2.障害年金の可能性
障害年金はがんの患者さんも受給されている方もいますが、正直ハードルは高いというのが実情です。
制度の詳細は「がん患者が障害年金申請する上で注意すること」をご覧ください。
再発の場合は初診日がどこになるかが重要ですので、申請をお考えの方は年金事務所(予約したほうが良いです)か病院に入っている社会保険労務士に確認されることをお勧めします。
制度3.その他公的な制度
身体の状況や生活の支障の程度により、身体障害者手帳や介護保険を利用している方もいます。詳細はがん患者が申請できる障害年金と障害者手帳と介護保険のポイントをご覧ください。
このあたりはに関しては、拙著「がんになったら知っておきたいお金の話 看護師FPが授ける家計、制度、就労の知恵」の252ページにも記載していますので、お持ちの方は合わせてご覧ください。
再発がわかった時の生活の不安
ここまでは制度に関してお伝えしてきました。
申請し、審査が通れば得られるものも大きい公的制度です。
しかし傷病手当金や有給休暇の利用も厳しいこともあります。
つらい状況であっても障害年金には該当しないかもしれません。
初発のときのがん保険の診断一時金が再発では出ないこともあります。
再発したけれど、今後の先が分からないのでどういう風にお金を使っていったらよいかわからない…
再発した後の今後というのは誰にもわからないので、その中で生活のことも考えていくのは大変ですよね。
正解はありませんが、その時に最善の選択をしていくことは十分可能ですよ。
今まで私が、数十名の再発した方のご相談に携わった経験からわかってきたこと。それは、
「再発後は1~2年スパンで家計を考えていく」
ということです。
理由はこの2つです。
① もし体調が変わったら、障害年金など検討していくことで、収入が変わってくる可能性がある
② 新しい治療法の認可が下りればそれもまた身体も治療費も変わってくる可能性がある
長く不確かなスパンよりは1~2年の家計を確実にこなしていく方が現実的であり、結果的に今が充実できるのです。
やり方は難しくはありません。
まずは今の状況が続くと仮定して1~2年の収入と支出、そこから出る1~2年後の資産と負債の計算をすることです。
このような形で今後のお金の流れが見えてきます。↓
Excelができる方ならすぐにできるかと思います。
手書きが良いという方には、拙著「がんになったら知っておきたいお金の話 看護師FPが授ける家計、制度、就労の知恵」の中にもフォーマットと書き方のひな型が掲載されていますので、お持ちの方はご活用ください。
一般的に公表されている「キャッシュフロー表」は、年単位ですが、がん患者さんには適していないことが多いため、開発したものです。
再発し、今後の生活に不安を感じている方へ
見通しがつかないことでの不安は確かにあると思います。
ですがお金の面では現時点での状況をもとに数字として確認することが可能です。
見える化することで「今の生活を続けてもこのくらいお金が残る可能性がある」と安心感が得られている方もいます。
もしもマイナス家計になりそうとわかったら、それは収穫です。
今から対策を考えていけば未然に防ぐことができるのですから。
対策の方法については、こちらを見るとわかります。(⇒お金の面で安心して治療を続ける方法とは?)
毎日家計簿をつける必要はなし、生活を無理に切り詰める必要だってありません。
もし何からはじめればよいのかわからない場合は、一度がん患者に詳しいFP(ファイナンシャル・プランナー)に相談し、改善法をシミュレーションすることで、解決策が見えてくるかもしれません。(→「がん患者がFPに相談すると何が変わるのか」)
なぜ、再発後の生活に悩んだ44歳の乳がん、骨転移の彼女が、
たった1時間でお金の心配が無くなったのか?
筆者プロフィール
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10年間の看護師経験を活かしたFPとして、がん患者さん、ご家族専門に年間およそ180件の家計相談を行っています。
治療費捻出だけでなく、安心して治療が行えるための生活費や教育費、住居費の悩み解決を得意としています。
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書籍:「がんになったら知っておきたいお金の話 看護師FPが授ける家計、制度、就労の知恵」(日経メディカル開発)
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