がん治療中に国民年金保険料が払えないときの方法

がん患者さんのお金の専門家 看護師FP黒田です。

「がん治療中は治療費を捻出するのがやっと。国民年金保険料が払えません。」と悩んでいる退職した方や自営業方向けの内容です。

健康保険は会社を退職後に任意継続という方法がありますが、年金に関しては厚生年金から国民年金に変更となります。(または家族の扶養になる)

年金に関するこんな悩みはありませんか?

会社員・公務員であれば、給料から当たり前に控除(引かれていた)年金保険料です。

しかしあなたが勤務先を退職された場合や、自営業である場合は収入が下がり医療費もかかる中での月々の年金保険料負担は大きいと思います。

「年金はそんなにもらえそうにないのに、支払った方が良いのか?」

というお考えもあるかもしれません。

月々支払う国民年金保険料は16,540円です(令和2年度)。 ※日本年金機構ホームページより
国民健康保険料(こちらは個々で変わります)と合わせると、結構な額になりますよね。

年金保険料を支払わないという選択もあると思います。
しかし、払わないと「未納」となってしまいます。

この未納はあなたにとってデメリットが生じますので、未納だけは防ぎましょう


老後の年金、障害が生じたときの年金、遺族への年金それぞれに影響を及ぼします。
つまり年金の問題はあなたの今後のお金の悩みにもつながる可能性があるのです。

ここからの内容は、拙著「がんになったら知っておきたいお金の話 看護師FPが授ける家計、制度、就労の知恵」の238ページにも記載していますので、お持ちの方は合わせてご覧ください。

生活費・治療費が圧迫して、年金保険料が払うことが厳しいとき

収入が下がる一方で、治療費の分支出は増えているのではないでしょうか。

そういった状況で毎月かかる年金保険料の負担は大きいですよね。

なので、年金保険料を支払わなくても良い方法をお伝えします。

年金制度には、免除の申請や納付猶予があることはご存じですか?

年金保険料は支払わないのですが、未納とは違いますので今後も安心です。
※一部免除の場合は一部支払います。

では、気になる「未納」と「免除」の違いについてご説明しますね。

未納と免除の年金への反映の違い

 

老齢基礎年金の
受給資格期間への算入

老齢基礎年金の
年金額への反映

障害基礎年金、
遺族基礎年金の
受給資格期間への算入
納付

あり

あり

あり

全額免除 あり

あり
(※2)

あり
一部納付
(※1)
あり

あり
(※3)

あり
納付猶予
学生納付特例
あり なし あり
未納 なし なし なし

※1 一部納付の承認を受けている期間については、一部納付の保険料を納付していることが必要です。
※2、※3 年金額への反映の割合については、下記「保険料免除・納付猶予された期間の年金額」をご覧ください。
(注)障害基礎年金及び遺族基礎年金を受け取るためには一定の受給要件があります。

参考:日本年金機構ホームページ

未納だと✖でも、免除の申請をすることにより、年金受給に関して権利を取っておくことが可能となります。

免除申請は年金支給の可能性が広がることも

あなたの身体の状態が落ち着き、支払いが可能になったら、追納することも可能です。(10年間の期限あり)そうすることであなたの老齢年金が増える可能性があります。

老齢年金だけではありません。化学療法が継続して副作用が続いている、がんによる体調の変化がみられて復職が難しい場合には、今後障害年金の申請も視野に入るかもしれません。

がん患者が障害年金申請する上で注意すること

そして、あなたのお子さんが小さい場合は、遺族基礎年金の支給の可能性もあります。
なぜこの話をするのかと言いますと、生命保険の代わりになるからです。
「子どもがまだ小さいので、これからでも生命保険に入ることはできますか?」という質問も多いので、遺族保障という視点でご説明しますね。

会社員や公務員の加入している厚生年金とは異なり、国民年金の方がお亡くなりになった場合遺族年金は基礎年金のみです。

遺族基礎年金は18歳の3月を迎えるお子さん(障害を抱える20歳の子も)がいる場合、遺族へ支給されます。要件は亡くなる前1年間未納がないことです。

つまり、年金保険料が支払うことが難しい場合、免除申請をしておくことで遺族に年金が支給されるのです。金額はお子さん一人の場合年間約100万円、とても大きいです。

お子さんが小さい場合は、生命保険に入ると思って免除申請をしてくださいね。

これから年金の免除をお考えのあなたへ

これからあなたが考えていく年金保険料の免除のポイントはこの3つです。

「年金保険料免除が可能か」

「家族の扶養に入ることは可能か」

「免除・家族の扶養に入れない場合どうするか」

注意しておきたいのは、免除申請には所得審査があるという点です。

あなたの他に世帯主や配偶者の前年(1~6月は前々年)の所得により審査されます。
例えば、乳がんの妻が国民年金の支払いが厳しくなったとしても、世帯主の夫の収入が安定している場合は免除を申請したとしても厳しいということです。

そういった場合は家族の扶養に入ることは可能かも合わせて考えてみましょう。
がんで退職するとき、健康保険の選択は慎重に」の扶養要件を参考にしてください。

免除や家族の扶養が該当しない場合に考えること

今回は国民年金保険料の免除の方法や家族の扶養に入ることについて解説しました。

しかし、所得の要件で年金保険料の免除や家族の扶養なども該当しそうにない場合はどうしたら良いでしょうか。

他に何か収入源となるものは無いか、そして今後の費用面をどうしていくかを早急に考えていきましょう。

筆者プロフィール

黒田 ちはる
黒田 ちはるがん患者さんのお金の専門家 看護師FP®
10年間の看護師経験を活かしたFPとして、がん患者さん、ご家族専門に年間およそ180件の家計相談を行っています。
治療費捻出だけでなく、安心して治療が行えるための生活費や教育費、住居費の悩み解決を得意としています。
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書籍:「がんになったら知っておきたいお金の話 看護師FPが授ける家計、制度、就労の知恵」(日経メディカル開発)