看護師×FPという立場上、医療従事者やFPの前でお話する機会が多いのですが、医療従事者、特に医療ソーシャルワーカーや看護師から、「なぜFPが医療現場に介入するのか」「医療従事者としてどこまでアドバイスしていいのか。」と聞かれることも少なくはありません。

私自身、病院での勤務時代からこのことを考えていました。引っかかっていた部分ですが、病院を退職しFPとして個人事務所を開業して一年半が経ち、がん患者さんやご家族の家計相談に対応する中で答えが明確になってきました。この機会に皆様へお伝えしたいと思います。

まず「なぜFPが医療現場に介入するのか」ですが、これは「なぜ医療従事者がお金の相談対応ができないのか」が重要となってきます。

① 時間がない
② 問題が起こった時の対応
③ 知識量の保持

お金のアドバイスを行う時間がない

言わずもがなですが、お金の相談というのは個人差があり、まず情報収集に時間がかかります。分刻みで動いている医療者にとって患者家族の収入・支出、貯蓄、保障内容、住宅ローン…他の患者さんを待たせてまではとても行えません。私自身振り向いたら他の患者さんが待っている中で電卓を叩いて住宅ローンの計算や生活設計まではとても行えませんでした。
ノンストップで相談が行え、手厚いケアが行えるという意味では医療職によるお金の相談もありだと思いますが、患者さん一人に対する時間がかかることで、救える患者さんも減るというリスクも考えられます。

 

問題が起こった時の対応はどうするのか?

次の「医療者がどこまでお金のアドバイスしてよいか」にもつながってきますが、医療者はあくまでも医療者としての発言になります。

例えば相続のアドバイスをしたとします。後々遺族間で問題が起きないとも限りませんし、そのような事態が起きた時には、果たして医療者として責任が持てるでしょうか。
社会保険労務士が障害年金の代行業務を行ったり、税理士が税務を行うような独占業務がFPにはありませんので、お金のアドバイスを行うこと自体は問題がありませんが、やはりアドバイスを行う以上責任を持って継続的に対応していくには、資格を持ったものの責任感というのは大切だと思っています。
医療職と専門家、それぞれの専門性を高めていくことが患者さんへの包括的なケアへつながるのではないのでしょうか。

私自身、目の前の患者さんやご家族が困っているのをみて、アドバイスしてあげたい気持ちはありましたが、①でできなかったことと同時に、結果的にではありますが②の危険性を回避していたのだなと思いました。

 

継続していくには知識量の保持も必要ですが…

看護師の経験を持つ身としては、ここもかなり大変だと感じています。
看護師だと看護研究や委員会、その他ラダーなど業務以外に行うことが多いです。そして新しい治療法についての勉強会もあります。

一方でFPや社会保険労務士も毎年制度改正があり、知識のブラッシュアップを行っています。

前述のような大変さやリスクを抱え、医療者ばかりに負担を要するよりも、専門家が介入することにより包括的で専門性の高い患者ケアが提供できるのではないかと考えています。

 

医療者としてどこまでアドバイスしたら良いのか…線引きは?

まずはどのような患者・家族が経済的に困っているのか、困りそうなのかのスクリーニングです。医療者、特に看護師や医療ソーシャルワーカーは一番近くで患者・家族と接しています。社会面の情報収集を行う際に自営業・一人暮らし、小さな子供がいる…などで声かけが行えれば、困りそうな方が実際に困る前に早期対処できるきっかけとなるのです。

この時、制度やお金のやりくりについて詳しい説明は必要ありません。大切なのはどこに何を持参し、どのように聞けば解決するのかです。時間もそんなにかかりません。がん制度ドックを患者さんやご家族と一緒に行うのも一つの方法だと思います。その時の体調に合わせて、現在どんな制度が申請できる可能性があるのかをリストアップすることができます。情報提供していけることもとても重要な社会的苦痛のケアだと思っています。

そして、制度ややりくりの概要がわかったけれど、個別的にどうなのか?といった際には専門家との連携が必要になってきます。全国どこでもこの連携が当たり前に行えるようなしくみづくりとして、私はFPの相談員を増やすことと、医療従事者への理解を広めていくことを進めていきます。

千葉では、理解ある医療従事者と共同で医療従事者への勉強会を企画しています。少しずつですが広まっていくことで患者さんやご家族のつらさが軽減することにつながればと思います。