看護師FP(家計の専門家)としてがん患者さんの家計相談対応やがんとお金の講師業をしていると、「がん治療はどの位お金がかかりますか?」と聞かれることが多々あります。その質問に対する私の答えは、

「平均的なデータや統計では、〇〇万円と言われていますが、あなたの場合は分かりません。」

です。どなたでもこう答えています。これは実際に患者さんの相談対応をしているので言えることですが、条件によって大きく異なるので、はっきり〇〇円かかるとは言えないのです。条件とは、高い自由診療を選択するかどうかということではなく、もっと基本的なことです。

  • 健康保険の自己負担額
  • どの年金に加入しているか
  • 休職時の保障制度(公的、職場)
  • 生活費、住居費、教育費など医療費以外にかかるお金
  • 家族情報
  • 個室を希望している
  • 貯蓄額(緊急時に使えるお金)

まずはここを確認しないと答えられません。同じ病気で同じ治療をしたとしても、上記の条件がすべて同じ人はいないからです。健康な時と同等の生活水準を保つためには、ひとりひとり必要な金額は変わってきます。

保険の加入の参考にしたいとお考えの方からの質問に多いです。しかし私は「みんなが良い保険」というのは難しいと考えています。これらの条件は、平均データでは表せない個人差のあるものです。保険の加入に関しては、平均ではなく個人の条件を基に考えて検討していただくか、条件をみてプランニングしてもらえる保険の担当者が良いとアドバイスしています。

また、実際にがんになると進行度、治療内容、治療期間など様々な条件が加わってきます。

 

「他の患者さんはどうやってやりくりしているのですか?」

相談を受ける中で、がん患者さんからよく聞かれる質問です。「がん治療はどの位お金がかかりますか?」よりも現実的かつ具体的になっています。

この質問には、がん患者さんのお金の困りごとを解決するための情報が不足していることが表されていると考えられます。情報が足りていない背景には、「お金の教育」「がん教育」の場が少ないことや、相談できる人がいないことが挙げられます。

日本人はお金や病気の話はタブー視されている面もあると思います。ですので突然がんと告知されたときに情報が足りず、心身つらい中で対処しているという現状があるのだと感じています。

患者さん同士、同じ部位のがんで治療法が同じ方でも家計の面まで同じ方はいません。「がん×身体」や「がん×心」は分かち合えても、「がん×お金」で分かち合える人が中々いないという現状があります。そういった部分でがんとお金の悩みというのは孤独感を感じる要因のひとつにもなっています。専門家の介入が必要な部分であると実感しています。

現在の取り組みとして、ひとりひとり異なる健康状態やお金に対する専門家としての関わりと同時に、全国の総合病院でお金の専門家が対応できるしくみづくりを行っています。将来的には、患者さんやご家族が気軽に病気に関連したお金の相談が受けられるのが理想です